研究概要 |
アルツハイマー病の原因因子APP(Amyloid Precursor Protein)はI型膜貫通タンパク質であり、その細胞質領域に結合する分子の一つFE65はAPPの代謝を制御していると考えられている。定常状態の細胞においてFE65は膜上のAPPに捕捉された状態で存在しているが、浸透圧ストレスを負荷することによってAPPがリン酸化され、これによってFE65がAPPから解離し、核内に移行することを明らかとしていた。本研究では、実際にAPPから解離したFE65が核内で斑点状に局在することをReal time imagingによって明らかとした。浸透圧ストレス負荷によってFE65の結合分子TIP60もまた斑点状に局在することを明らかとしたが、両分子の結合領域を欠いた変異体でも同様の現象が見られたことから、直接的に分子間で作用していない可能性が考えられた。次にFE65の遺伝子発現減弱細胞を作成し、浸透圧ストレス負荷による表現型を探索した結果、DNA損傷マーカーの誘導が弱いことが分かった。さらにFACSを用いて浸透圧ストレスにより誘発される細胞死を調べたところ、FE65遺伝子発現減弱細胞では有意に細胞死が多く、FE65の再導入によって細胞死を抑制することが分かった。これらの結果から、FE65及びAPPを介した新たな細胞ストレス応答機構を提唱した(Nakaya, etal, JBC、 Suzuki & Nakaya, JBC)。 FE65がAPPに結合する同じ配列を認識する分子としてxll, xllLが知られている。このため、in vivoの状態ではFE65の機能発現に対し、上記分子の影響が出ることが考えられる。よって、これらの遺伝子を破壊したマウスを作成し、まずその表現型を解析した結果、APP代謝に変動があることが分かった(Saito, et.al., JBC)。
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