研究課題
若手研究(B)
イムノグロブリンスーパーファミリーの接着因子であるL1-CAMのファミリーで、L1-CAMにホモロジーの高いclose homologue of L1(CHL1)の神経因性疼痛モデルラットにおける挙動を検討した。L1-CAM同様、CHL1は神経の動的な変化・発達に関与する分子であり、我々はすでにL1-CAMの変化と神経因性疼痛における関与を報告した(Yamanaka et al., Eur J Neurosci. 2007 February 1 ; 25(4) : 1097. 1111. )。今回、我々は神経因性疼痛モデルであるspared nerve injury model(SNI model)を使用し、CHL1 mRNAとタンパクの挙動を後根神経節(DRG)と脊髄後角において検討した。CHL1はL1-CAMと異なり、末梢神経損傷後に発現上昇する事を見いだした。この発現上昇は小型のDRGニューロンを中心において起こり、脊髄後角へ輸送され、独特の染色パターンを脊髄後角I-II層で示す事を確認した。L-CAMは末梢神経損傷後にシナプスへ集積するが、CHL1はシナプス外の神経終末部分に集積を認めた。電子顕微鏡によるCHL1タンパクの陽性を特定した結果、CHL1は軸索.軸索間、軸索.樹状突起間、軸索.グリア間に集積を認めた。CHL1の細胞外ドメインに対する抗体を髄腔内投与して疼痛行動を検討した結果、CHL1抗体投与は濃度依存的にSNIモデル動物における疼痛行動を抑制する事がわかった。CHL1の脊髄後角における接着活性の変化が疼痛行動をもたらす可塑的な変化、または脊髄後角の神経の興奮性の変化に関与していることを本研究は明らかにした。
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