研究課題
若手研究(B)
本研究課題では、悪性神経膠腫におけるがん幹細胞の性質を理解するための一つのアプローチとして、神経幹細胞における幹細胞維持に関わる分子メカニズムの解明を試みた。特に悪性神経膠腫においてしばしば過剰活性化が認められるPI3K、mTORの神経幹細胞維持における役割について検討を行ったところ、これらが新規機序により神経幹細胞維持に関与していることが明らかになった。すなわち、PI3K、mTORの単独抑制が神経幹細胞の幹細胞としての性質(幹細胞形質)に影響を与えなかったのに対し、両者の同時抑制は幹細胞形質を失わせ分化を誘導した。また、従来mTORの活性はPI3Kに依存すると考えられてきたが、少なくとも神経幹細胞においてはmTORの基質の一つ4E-BP1が幹細胞形質と同様にPI3KとmTORのmutually independentかつredundantな制御を受けていることを見いだした。以上の結果は神経幹細胞の維持が、従来から知られるPI3K・mTORの"linear pathway"ではなく、"parallel pathway"によって制御されている可能性を示すものである。神経幹細胞と脳腫瘍幹細胞の類似性に鑑み、本研究成果はPI3K/mTOR dual inhibitorによる悪性神経膠腫治療の理論的根拠を与えるものである。
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Neurosci Lett 470
ページ: 115-120
Biochem Biophys Res Commun 371
ページ: 273-277