研究概要 |
本研究において、C型肝炎ウイルス(HCV)増殖を制御するインターフェロン誘導遺伝子(ISG)(GBP-1, IFI-6-16, IFI-27)の強制発現系を用い、独自に開発したC型肝炎ウイルス(HCV)レプリコン増殖細胞及びGenotype 2a. JFH1株由来HCV感染培養系を用いて, 蛋白翻訳、HCVゲノム複製、ウイルス粒子形成の各ステップに対する影響を詳細に解析することを目的とした。(1) genotype2aJFH株由来のHCVレプリコン増殖細胞にISG発現プラスミドベクター(GBP-1, IFI-6-16, IFI-27)を遺伝子導入したところ、レプリコン増殖は有意に抑制された(GBP-1 ; 42.2±12.3%, IFI-6-16 ; 38.1±7.0%, IFI-27 ; 57.1±13.2%(2) HCVレプリコンと同様にHCV感染培養細胞にISG発現プラスミドベクターを遺伝子導入し, 培養上清中のHCVコア抗原を測定したところ、ISG発現により、培養上清中のHCVコア抗原量は抑制された。さらにHCV感染細胞中からRNAを抽出し, RT-PCRを行い, HCVコア抗原遺伝子の定量したところ、ISG発現により、細胞内のHCV-RNA量は有意に抑制された(GBP-1 ; 38.2±1.39%, IFI-6-16 ; 54.6±2,93%, IFI-27 ; 50.7±2.81%)。(3) shRNAを用いたISGノックダウンによる影響 : 抗ウイルス作用を有するISG(GBP-1, IFI-6-16, IFI-27)を標的とするshRNA(short hairpin RNA)発現プラスミドベクターを作成した。shRNA発現プラスミドベクターをHCV感染培養細胞へ遺伝子導入し、培養細胞中のHCVコア抗原量を測定したところ、培養上清中のHCVコア抗原量は増加した。さらにHCV感染細胞中からINAを抽出して、RT-PCRを行い、感染細胞内のHCV-RNAを定量したところ、shRNAにより、HCV-RNAは有意に増加した(shRNA-GBP-1 ; 161.1±1.95%, shRNA-6-16 ; 155.7±18.6%, shRNA-IFI-27 ; 114.6±7.13%)。以上の結果から、申請者が同定したISG(GBP-1, IFI-6-16, IFI-27)は、HCV感染細胞内で、HCV増殖に対して直接的に作用し、HCV増殖を抑制していることが示唆された。HCV増殖を抑制する特定のISGを特化した治療が新しいHCV治療となりうる。
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