研究概要 |
これまで,炎症やインスリン抵抗性(IR)は,非アルコール性脂肪肝の成因や増悪因子であることを証明してきた.本研究では,逆に肝臓の脂肪化が炎症やIRを形成する機序を探った.肝細胞(ラットH4IIEC3)に脂肪酸(Palmitate)を処置すると,ミトコンドリアROS産生亢進を介してJNKが活性化された.JNKが細胞に炎症やアポトーシスを誘導することがすでに知られており,この結果は,肝での脂肪化と炎症をつなぐ新しいメカニズムの一つを明らかにしたといえる.さらに,肥満状態では,肝臓のタンパク分解系の機能障害が生じ,代償的にそれらを構成する遺伝子群が協調的に亢進することが分かった.また,タンパク分解系の機能障害は,肝臓でのインスリン抵抗性を引き起した.今後さらに検討し,肝臓病としてのNAFLD/NASH, IRや肝脂肪化が増悪因子であるC型肝炎,及びIRに関連した全身病態としてのメタボリックシンドロームや2型糖尿病の病態解明や新たな治療法開発に貢献したい.
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