研究課題
若手研究(B)
[背景]Tumor necrosis factor α(TNFα)の細胞内信号伝達は、TNF receptor (TNFR)1とTNFR2という2種の受容体を介するが、腎病変の進行においてそれらの伝達系がいかなる制御を受けているかは明らかではない。[方法]腎線維化モデルである片側尿管結紮(unilateral ureteral obstruction; UUO)ラットの腎障害の経時的変化に関して、TNFα、TNFR1、TNFR2、TNFR1のシグナル伝達因子TRADD、アポトーシス、細胞増殖(Ki67)を定量的RT-PCR法、Western法、TUNEL法、免疫染色法などで比較検討した。また、TNFα中和抗体であるエタネルセプトを投与し、障害軽減作用機序に関して検討した。さらに、TRADDのユビキチン依存性蛋白分解制御について、degradation assay、ubiquitin assay、免疫沈降法などで検討した。[結果]1. UUO腎ではTNFα、TNFR1、TNFR2、TRADDのmRNAは、経時的に増加した。しかし、それらの蛋白レベルでは、TNFR2蛋白は増加するが、TNFR1蛋白は軽度減少し、TRADD蛋白はmRNA増加にもかかわらずUUO1日後より有意に減少した。2. UUO腎ではTRADD の分解亢進(degradation assay)とユビキチン化の亢進(ubiquitin assay)が認められ、このTRADD分解はプロテアソーム阻害剤により抑制された。3. HEK293細胞においてTRADDがユビキチン化されることがin vitroでも確認された。4. TNFα阻害剤エタネルセプトの投与は、UUO腎障害を軽減し、TRADDの分解を抑制した。[考察]UUO腎の尿細管間質障害進行に関与するTNFαの細胞内信号伝達では、TNFR1を介するTNFαの信号伝達因子TRADDがユビキチン依存性プロテアソーム蛋白分解制御を受けることでUUO1日後より減少していることが明らかになった。このUUO腎におけるTRADDの減少は、その腎障害進行においてTNFαの信号をTNFR2を介した信号伝達系優位に働かせている可能性が示唆された。
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Am J Pathol 175(1)
ページ: 74-83
American Journal of Pathology 175(1)