研究概要 |
本研究は,抗AQP4抗体陰性の視神経脊髄炎における新規自己抗原の解析を目的に,その臨床病態およびT細胞系の検討を行ない,新たな特異的抗原の発見を目的とする. 我々は,神経系の主要な臨床症状である慢性頭痛について検討し,抗AQP4抗体陰性症例は,抗AQP4抗体陰性症例と比較し,前兆のある片頭痛が有意に少なく,臨床症状に差異があることを報告した.さらに補体系の検討では,抗AQP4抗体陽性症例及び抗AQP4抗体陰性症例との比較において,抗AQP4抗体陰性OSMSでは,抗AQP4抗体陽性症例ほど再発期の血清補体値上昇を認めないが,抗AQP4抗体陰性MSよりも上昇を認める症例が多く,両者の中間的な性格をもつことを明らかにした. さらに,抗AQP4抗体陽性および陰性症例の末梢血単核球細胞および脳脊髄液を用い,スーパー抗原あるいはPMAおよびIonomycinで刺激し,IFN-γ,IL-4,IL-9,IL-17をcytokinesecretion assay法およびflow cytometry法を用いて分析し,各々の主要産生細胞であるヘルパーT1細胞,ヘルパーT2細胞,ヘルパーT9細胞,ヘルパーT17細胞のTh細胞動態測定した.現在までに,多発性硬化症患者1名において,MOG特異的反応性T細胞の増殖を確認している.さらに,細胞内サイトカイン測定法による測定,ケモカイン受容体の測定を行い,様々な角度からTh細胞の動態,すなわち抗原特異的T細胞の存在を検討中である. 以上,新規自己抗原の同定までは至っていないが,抗AQP4抗体陰性視神経脊髄炎では,補体系における病態は多発性硬化症および抗AQP4抗体陽性視神経脊髄炎の中間的な病態に位置しており,異なる一群である可能性を,本研究で示した.
|