研究概要 |
計画書に記載した方法を用いてパラビオーシス片側胆管結紮モデルマウスを作製し、胆管結紮施行6日、1、3ヶ月後の胆管結紮側マウス非結紮側マウスの血液・肝組織をそれぞれ採取して解析を行った。パラビオーシス作成後、片側マウスに対し開腹・総胆管剥離のみを行った後に閉腹したマウスをコントロールとして用いた。 血漿AST・ALT値は胆管結紮3ヶ月までコントロールマウスの2~3倍高値を推移し肝障害の持続が示唆された。またAST・ALT値ともに結紮側と対側マウスで差はなく、両マウスで循環が共有されていることが確かめられた。一方で血漿総胆汁酸および総ビリルビン、直接ビリルビン値は胆管結紮マウスの右心房血のみで上昇しており、対側マウスの右心房血では上昇は認めなかった。胆管結紮によって結紮マウスの循環血中に逆流したこれらの物質が、対側マウスの肝細胞により排出された可能性が示唆された。これらの物質の肝細胞における代謝を解析するため、胆汁酸取り込みを担うNTCP、排泄を担うBSEP, MRP2、カナル側への逆排出を担うMRP4, MRP3の遺伝子発現を調べたところ、胆管結紮マウスではNTCPの減少、MRP4, MRP3の発現上昇を認め、一方で対側マウスの肝組織ではNTCPの発現上昇を認めた。またこれらのトランスポーターの発現を司るFXR, PXR, CARの発現を調べたところ、胆管結紮マウスでPXRが発現上昇し対側マウスでFXRの上昇を認めた。さらに興味深いことに、胆管結紮1ヶ月後には著明だった胆管結紮肝における肝細胞壊死および偽胆管の増生が結紮3ヶ月後には消失しほぼ正常の構築を回復していた。 胆管結紮肝における胆汁酸代謝を非結紮マウス肝が代償した結果、胆管結紮肝において肝再生が促された可能性が示唆され、この分子機構を解明することは胆汁うっ滞肝における肝再生機構を明らかにする上で重要であると考えられた。
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