研究概要 |
アトピー性皮膚炎など難治性のかゆみで苦しむ患者が急増している。かゆみはかきむしらずにはいられない不快な体性感覚である。そのような不快な感覚をつくり出す脳内処理過程を制御することができれば、かゆみを抑制することも可能になる。それを実現するためには、まず、かゆみの脳内メカニズムを解明しなければならない。そこで、本研究では、脳磁図とfMRIを用いて、かゆみ独特の不快感が脳内でつくり出されるメカニズムの解明を目指した。本研究は健常成人を対象とした。左手首にかゆみ刺激あるいは痛み刺激を与え、そのときの脳活動をかゆみと痛みで比較することにより、かゆみ特異的な脳内処理過程の抽出を試みた。特に、かゆみの脳磁図実験は本研究が世界初であり、ミリ秒単位で起こるかゆみの脳内処理過程を世界で初めてが明らかにした。例えば、かゆみの神経情報が、視床から刺激と反対側の右脳第二次体性感覚野(反対側SII)へ、そして、同側SIIへと伝達されることなどを明らかにした(Mochizuki et al., Journal of Neuroscience, 査読中)。次に、かゆみの実験と同一被験者で、痛み刺激時の脳活動を脳磁図とfMRIを用いて計測した。得られた脳磁図・fMRIデータをかゆみと痛みで比較した結果、ある特定の脳領域でかゆみと痛みで活動パターンに違いがあることがわかった(論文執筆中)。すなわち、本研究により、かゆみに特異的な脳領域が特定された。この脳領域がかゆみ独特の不快感に関係することがわかれば、将来、かゆみ独特の不快感を取り除く治療法・対処法の開発などへと応用することが可能になる。
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