研究概要 |
目的:薬物治療抵抗性の気分障害に対する反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の安全性、有効性と治療反応性を検討する。神経画像を用いてrTMS前後での脳形態の変化を調べる。 方法:単極性及び双極性のうつ病を対象としてrTMSを計10セッション施行。刺激頻度は20Hz又は1Hzで、刺激強度は安静時運動閾値の90-100%、週の総パルス数は5000とした。頭部MRIと超音波によるナビゲーションを用いて前頭前野背外側面(DLPFC)を刺激した。 結果:被験者51名(平均年齢:48.2歳、男36名、女15名)の中でrTMS開始前のハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)は12.9±4.6点で、rTMS終了後は8.0±5.1点であり、有意な改善を認めた(Z=5.88,p<0.0001)。治療前後で50%以上の改善を認めた群は41.2%で、25%以上50%未満の部分改善群は29.4%で、25%未満の非改善群は29.4%であった。前頭葉機能の改善も認められた(言語流暢性:Z=2.62,n=40,p=0.009)。重篤な有害事象は認められなかったが、33.3%において一過性に軽度~中等度の頭皮痛を認めた。治療反応性の予測因子としては年齢や運動閾値に加えて臨床像との関連が推測された。rTMS前後の脳形態変化は刺激部位である左DLPFC(t37=5.53,p<0.0001)を中心として前帯状回などにおいても灰白質体積の増加が認められた。さらには刺激部位を中心として両側DLPFCにおいて拡散係数の低下を認めた(t20=8.12,p<0.0001)。改善群と非改善群を比較した場合に、改善群において左DLPFCの体積増加と拡散係数低下が認められた。 結論:非盲検デザインではあるが、ナビゲーションガイド下rTMSの安全性と有効性が示唆された。rTMS後の灰白質の体積増加や拡散係数低下はrTMSによる神経可塑性変化を示唆する所見であり、抗うつ効果発現との関連が示唆された。
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