研究課題
若手研究(B)
水分子の拡散係数の最大方向を追跡するMRIの特殊な撮像法である拡散テンソルトラクトグラフィー(以下DTT)を用いた末梢神経損傷後回復過程の可視化とその妥当性を評価するため組織により制限される水分子の拡散(この性質を異方性という)変化の詳細を検討した。なお、この成果は本年NeuroImage誌へ発表した。a) ex vivo modelにおける坐骨神経損傷後の拡散異方性動態 : 拡散異方性の指標にFractional anlsotropy(FA)値があるが、一定のFA値の閾値以上の構造物を描くDTTについて損傷後3時間で損傷部にて描出が止まるが損傷後4日より損傷部を超えるトラクトが出現した。損傷部のFA値は直後より異方性が下がりその後回復した。損傷遠位部のFA値は損傷後1日まで変化はみられないが、4日後には低下し、損傷後回復し3週で損傷前と同レベルまで回復した。b) 拡散異方性変化と組織学的変化の相関性 : 損傷後4日より軸索の変性、脱髄が起こり3週頃から再生軸索と思われる小さな線維が出現し、徐々にmatureとなる像が確認された。これらの組織像に基づき軸索密度、軸索径、髄鞘密度、髄鞘幅を測定し、FA値と相関をみたところ、軸索密度と軸索径により強い相関を示した。c) 拡散異方性変化と機能的変化の相関性 : 各種機能検査を行った。いずれも損傷後1日に最も低下し、その後回復し6週には損傷前のレベルに回復した。a)の結果よりFA値はこれより早く3週で回復を示していたため、FA値がこれらの機能回復を予見しうる可能性が示唆された。またいずれも損傷部のFA値と強い相関を示した。d) live modelによる末梢神経の特異的描出 : 麻酔下にDTTを撮像し同一個体における経時変化を観察したが、損傷遠位方向に描ける様子が観察され、生きた個体モデルにおいても末梢神経回復の描出に成功した。
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NeuroImage 44
ページ: 884-892