研究概要 |
骨髄に存在する造血幹細胞を磁気細胞分離システムを利用しsca-1陽性,c-kit陽性,lineage抗原陰性のいわゆるスタンダードな造血系幹細胞を純化したうえで、それらの細胞群のin vitroでの骨芽細胞への分化能を検証したところ、MC3T3やLM8などの骨芽細胞株の培養上清で培養を継続するとそれまで浮遊していた細胞が接着系の細胞に変化しアルカリフォスファターゼ陽性の性質を有することまで明らかとなった。しかしそれらの細胞は、増殖能に乏しいことから、長期間の培養が困難であることが判明した。一方でin vivoではマウスを用いた異所性骨化モデル(rhBMP-2<recombinant human bone morphogenetic protein-2,骨形成因子>を含浸させたコラーゲンペレットをマウス背部広背筋筋膜下に移植し異所性に骨形成を観察できるマウスモデル)に対して末梢血に造血幹細胞を放出する作用をもつコンパウンドであるAMD3100を投与したところ、異所性の骨形成の低下、骨髄の低形成および大腿骨の骨密度の低下という仮説とは逆の現象が観察された。FACS解析を行うとPDGFR陽性の間葉系幹細胞(MSC)とVEGFR陽性の血管内皮前駆細胞(EPC)の誘導が顕著に阻害されることにより骨形成が大幅に低下したものと考えている。今後はGFPマウスを用いた骨髄移植モデルで骨髄と異所性骨形成との関連を調べてゆき、これらの現象を骨形成、骨再生に利用する実験系を確立中である。
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