研究課題/領域番号 |
20791169
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
産婦人科学
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
吉村 志帆 (岡崎 志帆) 昭和大学, 医学部, 普通研究生 (50384441)
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連携研究者 |
関沢 明彦 昭和大学, 医学部・産婦人科学教室, 准教授 (10245839)
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研究期間 (年度) |
2008 – 2009
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研究課題ステータス |
完了 (2009年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2009年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2008年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 癒着胎盤 / 母体血 / RNA / 妊娠高血圧症候群 / cell-free RNA / cellular RNA / 胎盤機能 / 血漿RNA / 大量出血 / 発症予知 |
研究概要 |
母体血漿中cell-free RNAや細胞成分cellular RNAを用いてhPL, hCGの遺伝子発現を定量すると、hPL遺伝子は、妊娠経過に伴い漸増する。母体血漿中RNAの半減期は32分で、分娩後、24時間で検出されなくなる。細胞成分RNAの半減期は200分で血漿中RNAに比較して長く、分娩後24時間でも検出されつづける。しかし、これらの遺伝子発現はそれぞれの血中蛋白濃度と相関しており、母体血漿中RNA・細胞成分RNAを用いて胎盤の機能的な変化がモニターできると考えられる。しかしながら、癒着胎盤については、妊娠初期に600例以上の検体採取をおこなったが、その症例に癒着胎盤は発生しておらず、至適マーカーの同定には至らなかった。癒着胎盤については、発症率が極端に低いが、分娩時には大量出血を惹き起こし、母体死亡の原因にもなる重要な疾患である。今後も根気強く検体採取を継続し、その予知マーカーの開発につなげていきたい。 そこで、妊娠高血圧症候群(PIH)に対象を拡大し研究を継続した。まず、母体血漿中cell-free RNAについてPIHを発症した妊婦とコントロール妊婦血中cell-free RNA及びcellular RNAで血管増殖関連因子や抗酸化ストレス因子などの遺伝子発現量を検討した。その結果、PIH患者血漿中でVEGF, FLT1, endoglinなど8種類の遺伝子発現量は、全て有意に増加し(p<0.001)、その発現量は、分娩後に急減した。さらに、各発現は、収縮・拡張期血圧、蛋白尿の重症度と有意に相関した。また、cellular RNAの検討でも、HO-1、HO-2、Catalase、VEGF、PlGFの遺伝子発現は低下、FLT-1、endoglin(ENG)、TGF-β1の遺伝子発現は有意に増加した。 そこで、妊娠中期の臨床症状がない時期に682例から採血し、その後にPIHを発症した症例(n=62)としなかった症例(n=310)を1 : 5マッチで無作為に抽出し、母体血漿中RNAと細胞成分RNAを用いて、血管増殖関連因子や抗酸化ストレス因子などの遺伝子発現量を比較し、発症予知の可能性を検討した。その結果、cell-free RNAでは、VEGF, FLT1, endoglinなど7遺伝子の発現量が妊娠中期に既に有意に高値を示していた。ROCカーブを用いた発症予知の検討で、FLT1、次いでEndoglinが最もPIHの予知率が高く、7種類を組み合わせで予知率が更に高まり、5%の偽陽性率で、PIHの84%が予知できることが分った。さらに、cellular RNAの検討でも、FLT1、ENG、P-selectin、PLAC1は妊娠高血圧症候群をその後に発症した群で高値を示し、逆に、PlGFとHO-1は低値を示した。TGF-β1、VEGF、SODには有意な変化は見られなかった。ROC curveを用いて妊娠高血圧症候群の発症予知の可能性について解析したところ、ENGが、次いで、FLT1が特に優れた妊娠高血圧症候群の予知マーカーであることが分かった。さらに、ENG、FLT1、PlGFと経産か否かの4因子の組み合わせで、妊娠高血圧症候群の66%が、疑陽性率10%で予知可能であることがわかった。このように母体血中を循環するcell-free RNA及びcellular RNAともに胎盤の機能的な変化を鋭敏に反映し、胎盤の機能変化をモニターするツールとして有用であると考えられた。
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