研究概要 |
研究の全体構想は、来る医療制度改革に向けた新しい地域完結型退院計画システムを構築することである。その中で本研究の目的は、同システムにおける病院看護師と訪問看護師の緊密なる連携の学術的・施策的根拠となる「看看連携」モデルプログラムの開発と評価を行うことである。 「退院患者の動向に関する全国調査」(日本看護協会, 2003)によると、退院後も入院中と同様の医療管理を在宅でも継続する必要性のある退院患者は約20%に上っている。わが国で今後推進される在院日数の短縮化の下では、現行以上に医療依存度の高い退院患者が増加することが自明である。病院から在宅へ移行する患者に対する、シームレスな医療やケアの提供は、病院と地域における関係機関の連帯責任であるが、その中にあって両者の看護職は互いに緊密に連携し、患者の生命と生活の継続を保障する責務を有する専門職と認識されるべきである。看看連携をめぐっては、病院から在宅療養に移行する患者に対し看護職が協働して専門性を発揮していくことが重要であるとの報告(柳澤, 2006、大森, 2004)や病院と地域の連携では各機関の看護職の役割が重要であるとの報告(佐藤, 2006)がある。しかしながら、これらは看看連携の重要性について指摘する程度に留まるものであり、その実践を示唆する実証研究ではない。すなわち看看連携のための具体的な実践モデルを示すような検討は未だ学術的にも施策的にも行われていない。 以上より、本研究では、病院看護師と訪問看護師における看看連携モデルプログラムの開発と評価を行うことを目的とする。今年度は小児在宅療養者に焦点を当て、Y市における小児訪問看護サービスの提供ならびに連携に関する実態を把握するため、質問紙調査(郵送法)を実施した。調査対象はY市における訪問看護ステーション150ヶ所とし、調査内容は小児訪問看護サービスの基本属性(設立主体、就業職員数、小児病棟経験者の有無、訪問総数)、小児訪問看護の実施状況、連携を行っている機関、小児訪問看護を行う上での課題についてである(回答数69ヶ所、回答率46.0%、有効回答数68ヶ所、有効回答率97.4%)。結果、小児訪問看護実施施設は38ヶ所(58.5%)、未実施施設は27ヶ所(41.5%)であった。小児訪問看護における課題は、家族との信頼関係の形成8件(28.5%)、家族とのコミュニケーション7件(25.0%)、家族へのケア・支援6件(21.4%)医療機関との連携5件(17.9%)長時間の訪問、知識と経験、地域との連携それぞれ3件(10.7%)、そのほか、24時間体制の整備、医療機関からの支援の継続、行政、学校との連携が挙げられた。今後、訪問看護ステーションならびに連携が行われている機関の看護職の連携について、その行為に焦点を当てて研究を進めて行きたい。
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