研究課題
若手研究(B)
統合失調症を持っ当事者が捉えた病の経験とは、幻覚や妄想に圧倒されて徹底的な無力感と敗北感を味わう経験であった。対象者が回復の過程で自ら発揮した力(resilience)としては、信頼関係を結ぶ力、人から学ぶ力、経験から学習する力、自分の認知を変えて前向きに捉えていく力、つらいことを忘れていく力、過去と同じ失敗を避けようとする力、無理しない程度に物事を継続する力が捉えられた。対象者の回復の過程では(1) 幻覚や妄想に圧倒され、仕事やそれまでの生活を失って徹底的な敗北感や無力感を味わう段階、(2) 無力感のなかで無気力に流されながらも日々できるわずかなことを行って日常生活を過ごす・人や薬に頼りながら人と自分への信頼を少しずつ取り戻す段階、(3) 無力感と小さな希望のあいだで揺れ動きながら自分の生き方を模索していく段階、(4) 無力感を残しながらも病の意味を整理し、自分らしく生きる段階がみられ、対象者は(3)か(4)のどちらかの過程を生きていると考えられた。
すべて 2009
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高知女子大学紀要 58
ページ: 53-74
120006937272