研究課題/領域番号 |
20820054
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研究種目 |
若手研究(スタートアップ)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美学・美術史
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
豊山 亜希 関西大, 文学研究科, 研究員 (40511671)
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研究期間 (年度) |
2008 – 2009
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研究課題ステータス |
完了 (2009年度)
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配分額 *注記 |
2,327千円 (直接経費: 1,790千円、間接経費: 537千円)
2009年度: 819千円 (直接経費: 630千円、間接経費: 189千円)
2008年度: 1,508千円 (直接経費: 1,160千円、間接経費: 348千円)
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キーワード | 美術史 / 考古学 / 文化遺産学 / ポスト・コロニアル研究 / 仏教 / インド共和国 / マハーラーシュトラ州 |
研究概要 |
平成20年度は、研究対象地域であるインドのマハーラーシュトラ州において、2度の現地調査を実施した。平成20年11月に実施した第1次調査においては、同州の州都ムンバイー市を拠点として、同市郊外に所在する仏教石窟寺院の開鑿例を実見した。当該地域の石窟寺院はインド全土の開鑿例のなかでも早い段階から外界に認知されていたことが、ヨーロッパ人の遺した旅行記から知られる。しかし現在では、大規模な都市開発によって埋没しつつあることから、19世紀のイギリス統治期に編纂された地誌事典を参照し、GPS機器による立地データの収集と写真撮影を中心に、最新の現状を記録した。その結果、優品主義的な美術史・考古学分野の先行研究を再検討し、石窟寺院という文化様式の新たな地図化作業と歴史的文脈の再構築を行うための基礎資料を整備した。 平成21年2〜3月に実施した第2次調査においては、前述した第1次調査の方法論を踏襲しつつ、調査対象地域をマハーラーシュトラ州全域に拡大し、総計11群の石窟寺院において基礎資料の作成を行った。また、今次の調査においては宗教文化の積層過程を明らかにするため、仏教石窟寺院に加え、ヒンドゥー教およびジャイナ教の開鑿例も調査対象に組み入れた。それによって、石窟寺院の文化地理的側面における有意義性が顕著となり、多様な宗教に帰属を変えつつ存続されてきたことが理解された。さらには、近年の文化遺産概念の興隆とインド国内の経済的発展に伴う保存意識の高揚によって、廃絶状態にあった石窟寺院が特定宗派によって再整備・運営されている事例も数例確認した。これは、石窟寺院を歴史研究の対象としてのみならず、文化遺産学という同時代的かつ複眼的なアプローチによっても、中長期的に調査研究していく必要性を強く喚起している。今年度の成果を受け、次年度以降もさらなる基礎資料の整備と、先行研究の批判的検証を深化させることを企図するものである。
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