研究概要 |
本研究は、ヒト前頭前野皮質における認知カテゴリーによる機能分化(記憶関連領域や眼球運動関連領域)とレチノトピー(retinotopy,網膜部位再現性;視野と皮質との1対1かつ連続的な対応関係)表象との関連性をfMRIによる脳活動計測で調べ、両表象を統合した前頭前野の組織化の総合的な理解の枠組みを築くことを目的とする。本年度は、fMRI実験中にコンピュータによる刺激呈示とMR装置の撮像開始を同期させるためのシステム開発を行い、位相符号化法(Sereno et al., 1995; Wandell et al., 2005など)と呼ばれる刺激呈示・fMRIデータ解析手法を用いて、前頭前野のトポグラフィーを同定するための予備実験を行った。また、前頭前野の活動を従来よりも詳細に捉えるために、実験データ取得と並行して解析方法の改良も行った。具体的には、非常に明確なレチノトピー表象を有する第1次視覚野の活動を基準に、大脳皮質上の活動を人間が見ていた視野の空間へと逆変換して可視化する手法を開発した。この手法を前頭前野活動の解析に適用することにより、記憶、注意、眼球運動課題などのパフォーマンスと脳活動との関係を1対1に対応づけて議論することが可能となる。前頭前野の組織化の様態を明らかにすることに役立つだろう。さらに、京都大学大型計算機センターが保有するスーパーコンピュータ資源を利用し、fMRI撮像データの空間解像度を従来の3×3×3mm^3から約1×1×1mm^3まで擬似的に向上させる解析システムを構築した。この手法を適用することで、前頭前野のより詳細な活動を捉えることが可能となる。
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