本研究は、戦後から高度経済成長期における定時制高校の生徒文化の変容を明らかにしようとしたものである。研究対象とした定時制高校の学校文書を主な資料として、生徒文化に関する考察を行った。考察の結果と得られた知見は以下の通りである。 戦後の社会変動と教育変動に伴い、定時制高校の学校文化、生徒文化は大きく変容した。戦後の定時制高校における生徒文化の変容の要因に関しては、各時期によって異なり、教員文化の影響もみられたが、最も大きな要因は戦後の社会変動及び教育変動に伴う生徒の社会的属性の変化であった。 先行研究において、1950年代前半には、勤労青少年の大衆文化とエリートの教養主義には断絶がみられるとされていたが、本研究で得られた知見では、勤労青少年が通った定時制高校において、教養主義と大衆文化が混在しており、中間的な文化がみられた。したがって、本研究の事例に限れば、エリート文化と大衆文化は断絶しておらず、むしろ連続していたという結論が得られた。 本研究の意義に関しては、第一に、これまで研究の空白であった領域を開拓した点、第二に、事例研究ではあるが、先行研究で指摘された知見とは異なる新たな知見を得られた点で研究上の意義があると考えられる。
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