日本における、小売主導による流通構造の変革メカニズムを明らかにする研究の一つとして、2000年代においてとりわけ急激な変化を経験しつつある生鮮食品のサプライチェーンを取り上げ、次の3点について研究を行った。すなわち、(1)サプライチェーン変革の実態の把握、(2)変革をもたらす要因の抽出と検討、(3)変革に関する理論的分析である。(1)については、主に統計資料および生産者・卸・小売業者といった関連業者へのインタビュー調査、(2)については、主に文献調査およびアンケート調査、(3)については流通構造を分析する理論モデルを用い、それぞれ検討した。結果は以下の通り。(1)欧米の変革では、卸排除が進んだが、日本の変革においては卸・小売間の長期継続的取引関係が重要な位置を占めている。(2)欧米と異なる変革をもたらした、日本独自の要因として、商品バラエティ、生産者のリスク態度、卸売市場制度の歴史的経緯の3要因がある。(3)大規模小売業者には、卸売市場を利用した旧来のスポット的取引から、新たな調達方法である契約取引へとシフトさせる誘引があり、それは生産者、小売業者、そして消費者の余剰を増加させる可能性がある。
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