研究課題
若手研究(スタートアップ)
本研究では自然水中の有機物(NOM)をコロイド球表面に接着する手法を開発し、前述した手法を基にして、AFMを用いたNOM-膜間の親和性評価手法の確立を目指すことを目的とした。タンパク質の膜面吸着に影響を与える因子を検討するために、膜材質の異なる2種類の膜を用いてBSAの膜面への付着力を測定した。膜材質及び溶液のpHがタンパク質の付着力に及ぼす影響を検討した結果、疎水性のPVDF膜と親水性のPE膜を使用した実験では、低pH(pH3)においてPVDF膜においてより強力な付着力が観察されたのに対し、高pH(pH10)ではPE膜の方がPVDF膜よりもタンパク質との親和性が高いことが明らかになった。さらに、Caを溶液に添加し、同様に付着力を測定した結果、PE膜についてのみ付着力が増加する様子が観察された。これは、BSAとPE膜間に静電気力が関与していることを示唆するものである。PVDF膜においては、pHの低下に伴って付着力が上昇したことから、BSAの付着には水素結合の影響が大きいことが推測された。これらのことから、AFMを用いてタンパク質の吸着力を測定出来る可能性が示されたと共に、膜材質がタンパク質の吸着に大きく影響することが明らかになった。膜構造の違いが付着力に及ぼす影響を検討した結果、同じ膜材質にも関わらず膜細孔径が異なることで付着力が大きく異なることが示された。今回検討した膜(PTFE)では、細孔径1μmから0.1μmにおいては付着力が上昇した一方で、0.1μmより細孔径が小さくなるにつれて付着力が減少する様子が観察された。このことは特定の大きさの粒子に対して最も付着しやすい膜構造が存在することが考えられる。今後、細孔径種とBSAビーズ粒径を様々に組み合わせて同様の実験を行うことで、膜閉塞に関与する粒径成分と膜構造の関係について、知見を深める予定である。
すべて 2008
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Environmental Science & Technology 42(14)
ページ: 5310-5315
Water Research 42(8-9)
ページ: 2029-2042