研究概要 |
本研究は, 臨床応用が期待されている生体用β型Ti合金Ti-29mass%Nb-13mass%Ta-4.6mass%Zr(TNTZ)の低弾性率を維持しつつ疲労強度を改善する新しい材料設計および加工熱処理プロセスを確立することを目的としており, 本年度はレアアース微量添加がTNTZ合金のミクロ組織および力学的特性に及ぼす影響について検討を行った. レビテーション溶解および熱間鍛造にてTNTZ, TNTZ-0.1, 0.2, 0.5mass%BおよびTNTZ-0.2, 0 5, 1.0mass%Yを作製し, 真空中にて溶体化処理(1063K, 3.6Ks)後, 冷間圧延を施した. ミクロ組織観察を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡により, 相同定をX線回折装置を用いて行った. さらに, 自由共振法により弾性率を測定し, 力学的特性をビッカース硬さ試験および引張試験により評価した. X線回折像からいずれの合金もβ相で構成されており, BおよびY添加により弾性率は若干増加したものの, いずれも70GPa以下と低弾性率を維持していた. ミクロ組織観察結果より, Y添加濃度に依存してミクロ組織は微細化したが, B添加による. ミクロ組織の変化は観察されなかった, さらにBおよびY添加により引張強度は有意に上昇することが明らかになった. 以上からレアアース微量添加により, TNTZの低弾性率を維持したまま力学的強度を改善することが可能であることが明らかになった. 引張強度と疲労強度は密接な関係にあり, レアアース微量添加によるTNTZ疲労強度の改善の可能性が示唆された.
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