研究課題
若手研究(スタートアップ)
陸生四肢動物は、「抗利尿ホルモン(バソトシン: AVT)-V2型受容体-水チャネル(AQP2)」のカスケードによる水の保持機構を有しているが、水生生活をする魚類では見つかっておらず、この機構は両生類以降で獲得されたと考えられてきた。本研究において、我々は、魚類と四肢動物をつなぐ系統学的に重要な位置にある肺魚に注目し、肺魚の脳視床下部からAVT前駆体cDNAを、腎臓からV1a型およびV2型AVT受容体と、AQP2の完全長cDNAの単離同定に成功した。2つの受容体およびAQP2の機能解析を行い、同定した分子群が機能的であることを証明した。V2型受容体とAQP2はこれまで魚類では報告されておらず、本研究により、魚類に上述の分子群が機能していることを初めて示すことができた。真骨魚類のゲノム検索においても当該分子が存在する可能性が低かったため、陸生動物が有している水の保持機構が肺魚類において獲得され、原始四肢動物の陸上進出に重要な役割を果たしたという新たな仮説の提唱をも視野に入れることが可能となってきた。さらに、AVTやAQP2の発現レベルが、淡水飼育下の肺魚では低いのに対し、夏眠下(乾燥適応)の肺魚では著しく増加していることが解かり、当該遺伝子が肺魚の夏眠、すなわち水から陸上への適応において重要な役割を担っていることが示唆された。これまでの研究成果は、国際学術雑誌および国内学会において発表するとともに、日本比較内分泌学会においては若手研究者最優秀賞を受賞して注目された。
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The Journal of Experimental Biology (in press)
The Journal of Experimental Biology 212
ページ: 249-256
比較内分泌学 34
ページ: 137-145
10021308591