研究課題/領域番号 |
20890065
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研究種目 |
若手研究(スタートアップ)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
外科系歯学
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
阿部 成宏 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (00510364)
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研究期間 (年度) |
2008 – 2009
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研究課題ステータス |
完了 (2009年度)
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配分額 *注記 |
3,302千円 (直接経費: 2,540千円、間接経費: 762千円)
2009年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2008年度: 1,742千円 (直接経費: 1,340千円、間接経費: 402千円)
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キーワード | 幹細胞 / 歯髄幹細胞 / 放射線治療 / 癌幹細胞 / 自己複製能 / 幹細胞マーカー / 分化 |
研究概要 |
1.修復・再生に関わる幹細胞:[目的]われわれは、過去にヒト根未完成歯・根尖部歯髄由来細胞(Apical pulp-derived cells ; APDCs)の性状解析と再生医学への応用を視野に入れた基礎的研究を行ってきた。その結果、APDCsの中に、神経堤幹細胞様細胞が存在している可能性を見出した。そこで、Neurosphere法を用いてそれらを単離し、性状解析を行った。また、根未完成歯へ放射線照射を施行すると、根形成阻害が生じることは以前から報告されていたが、それらのメカニズムを示唆するような報告が存在しないことから、それらを検討した。[結果]Sphere形成能は歯冠部歯髄由来細胞よりも、APDCsは高い形成能を保持していた。また、そのSphere形成細胞(Pulpal sphere-forming cells ; PSFCs)は、神経堤細胞系統(硬組織形成細胞、脂肪細胞、軟骨細胞および神経細胞)へと分化することができる細胞集団であることを見出した。さらに、APDCsとPSFCsを用いて、放射線生物学的に検討した結果、若年者の歯根形成期にある歯が放射線照射を受けると、根尖部歯髄幹細胞様細胞は、むしろ放射線抵抗性を示し、細胞死によって硬組織形成細胞の供給が不能になるのではなく、機能細胞への分化が抑制される結果、歯根形成不全に至る可能性が示唆された。 2.破壊に関わる幹細胞:[目的]近年、悪性腫瘍においても、同様に癌幹細胞(cancer stem cell;以下CSCs)と呼ばれる細胞集団の同定と性状解析が多くの研究者から報告されている。今回われわれは、ヒト口腔癌細胞株(HSCシリーズ)を用いて、無血清培地にてsphereを形成するCSCs様の細胞集団を分離し、その性状解析と放射線感受性に関する検討を行った。[材料および方法]ヒト舌癌細胞株HSCシリーズ(HSC-3,4,6および7)を用いた。各種細胞株におけるCD133とCD44のFACS解析を行った。さらに舌癌患者より採取した癌組織を用いてCD133およびCD44にて免疫染色を行った。次に無血清培地下でのsphere形成能を評価し、sphere形成が良好に認められたHSC-3およびHSC-7の2細胞株に関して、詳細に性状解析を行った。分化能に関しては、20%FBS添加DMEMHGにて2週間培養し、成熟角質マーカーをRT-PCR、免疫染色にて評価した。放射線感受性に関しては、コロニーアッセイを用いた。[結果]多くのCSCsマーカーであるCD133の発現は認められず、CD133-/CD44+細胞でもsphere形成が認められた。同様に、舌癌組織の免疫染色においてもCD133の発現は認められず、CD44は分化領域を除く領域に陽性細胞が認められた。Sphere形成能のある細胞は未分化能と自己複製能を保持しており、血清添加培地下での分化誘導に対して、成熟角質マーカーの発現が認められた。sphere形成細胞とBulkでの放射線感受性に対してコロニーアッセイを行ったが、HSC-3ではbulkに比較して放射線感受性、HSC-7では有意差を認めないまでも、若干の放射線抵抗性を示した。またこれらの結果はDNAの2本鎖切断の修復能を反映していた。[結論]口腔癌幹細胞マーカーとして報告されたCD133やCD44に関しては、われわれの結果では、分化マーカーを発現していないSphere形成細胞であってもCD133の発現を認めなかった。癌幹細胞特異的マーカーに関する研究は、今後より詳細な検討が必要である。今回、われわれは、ヒト口腔癌細胞株中に存在する未分化細胞集団を分離し、分化能ならびに放射線生物学的に検討を行い、必ずしも放射線抵抗性を示さない可能性が示唆された。
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