研究概要 |
平成21年度に申請者は、GSTM1を強発現させた白血病細胞株を用い、GSTM1がBcl3・NF-κB(p50)の活性化を介し、グルココルチコイド(GC)によるアポトーシスを抑制機構の解明に取り組んだ。 GSTM1によるBcl3・NF-κB(p50)の活性化で転写が促進される遺伝子を過去の情報をもとに定量PCR法を用いて解析し、GCアポトーシスと関連が深い遺伝子の抽出をおこなった。GSTM1を強発現させた細胞では、細胞周期調節因子であるcyclin D1の発現亢進を認めた。このcyclin D1の発現はGC添加前の構成的活性化を示しており、NF-κB(p50)の構成的活性化を反映しているものと考えられた。しかし、GC添加後の遺伝子発現変化では、GSTM1発現細胞と比較細胞との間でほぼ同様のkineticsを示したことから、Bcl3・NF-κB(p50)/cyclin D1の経路は、GCのシグナル経路とは直接的には関与していない可能性が示唆された。また、その他GCによるアポトーシス経路としての関与が予想されたMcl1,Puma,Bcl2などの遺伝子群は比較細胞との間に発現の差異はみられなかった。 RNA干渉実験によるGSTM1の発現抑制系を用いて、cyclin D1の発現とBcl3・NF-κB(p50)の関与を検討したが、electroporation法によるRNA干渉の持続時間が72時間という短時間の間においては、NF-κB(p50)の構成的活性化の低下までには至らず、cyclin D1との関連が証明できなかった。GCによるアポトーシス経路におけるBcl3・NF-κB(p50)/cyclin D1の関与に関しては、BCL3の強発現系を作製し現在検討中である。
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