研究概要 |
本研究課題は、レプチンによる自律神経を介する血圧上昇メカニズムについて、脳内分子と作用経路の解明に着目し、抗メタボリックシンドローム作用を持つ新規治療戦略への貢献を目指すものである。これまで研究代表者が確立した電気生理学手法により、麻酔下ラットの自律神経活動を計測して解析を行った。その結果、レプチンの側脳室内投与は腎臓交感神経活動及び褐色脂肪組織交感神経活動の亢進と、胃副交感神経活動と腹腔副交感神経活動の抑制を観察した。現在は、PI3K、MC4R、AMPキナーゼを発現する視床下部の各神経核のうち、レプチン効果を引き起こすための主要な神経核を決定するための実験系を確立している。いずれも標的分子のアンタゴニストやsiRNAを各神経核内へ微量投与する方法を確立する為の実験系である。視床下部内の神経核(弓状核、室傍核、背内側核、腹外側核、視交叉上核)は各々密接に局在しているため、注入部位の調節が極めて困難である。現在、研究代表者は刺激用の金属電極に薬物注入用のガラス管が付帯したものを使用して実験系を確立するための条件検討を行っている。また、レプチンの自律神経作用にはヒスタミン神経系が関与することを報告してきた(Tanida et al., 2007, Neurosci. Lett.)。レプチンと同様に摂食に関与する神経ペプチドとしてNeuropeptide-Y(NPY)やNeuromedin U(NMU)があり、これらの自律神経作用メカニズムにヒスタミン神経系が関与するかの検討も併せて行った(Tanida et al., 2009, Physiology & Behavior, Neuropeptide)。その結果、NPYの腎臓交感神経活動抑制及び胃副交感神経活動増大作用にヒスタミン受容体H3が関与することを見出した。
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