研究目的:幼児教育において、これからの社会を生きる子どもたちに'相手の気持ちを考える力'を育むことが大切だと考える。そこで本研究では、絵本の読み聞かせを通して相手の気持ちを考えることができるか、その効果を明らかにする。 研究方法:3歳児対象である。1.絵本をあるがままに読み聞かせ、どんな反応をするか観察する。2.絵本の内容を変更し、絵本では'悪役'として登場してくる人物を'主人公'として読み語ったときに、子どもたちがどんな反応をするか観察する。3.観察した結果などをまとめ、その効果を明らかにする。 研究成果:園児が相手(悪役)の気持ちになる5つのポイント1.絵本の内容。絵本の内容を、悪役を主人公として読み語る。2.パペット。悪役のパペットを用いて読み語ることで、ただ見るだけでなくパペットの動きに注目しやすく、同調しやすい。3.声色。悪役の声色は普段少し低めの声にするが、普通の声色で話しかけると'怖い'という先入観がなくなり、同調しやすい。4.呼びかけ。悪役が子どもたちに「応援して!」など話しかけるようにすると、応援するうちに悪役の気持ちになりやすい。5.ごっこ遊び。主人公と悪役に分かれてごっこ遊びをすることで、悪役の役割になった子どもたちは悪役の気持ちになってごっこ遊びを展開することができる。 子どもたちは悪役の気持ちは理解することができた。しかし「でも、それはしてはいけないこと。」という社会生活を送る上での善悪の判断を基準に絵本を見ていることが分かった。日常生活においてもトラブルになる前に貸し合いをしたり、友だちとトラブルになったときにも相手の気持ちを考えてどうしたらいいかを考えたりできるようになってきた。絵本の読み聞かせを通して実際に相手の立場に立ってみることが、相手の気持ちを考えるきっかけになると言える。
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