研究概要 |
我が国のオープンアクセス環境は、欧米のような政策や研究者によるイニシャチブなしに、おもに図書館や情報サービス機関の事業により実現されつつある。以下、欧米、日本のオープンアクセス環境及びオープンアクセスコンテンツの発見方法の状況について調査結果を述べる。 1. 欧米の状況。 アメリカでは、国立保健研究所(National Institute of Health)による助成対象の成果(研究論文)のPubMed Centralへの登録義務化という法令の形で(医療分野における)オープンアクセス環境が実現しつつある。また、個別の大学(ハーバード、MIT、カリフォルニア大学等)では、研究者主導により、部局単位ないしは全学で研究論文の義務化の提案がされ、実現されつつある。コンテンツは、(1)PubMed Central自体の検索、(2)PubMedの検索、(3)Google等の検索エンジン、(4)アメリカのハーベスタであるOAIsterの検索により発見できる。イギリスでは、研究者による助成組織(Research Councils,UK=RCUK)、民間の助成団体Wellcome Trustが助成対象の研究成果(論文)のオープンアクセスリポジトリ等への登録を義務付けている。後者は、医療系の助成組織であり、PubMed Central UK(PMCUK)への登録を義務づけている。RCUKは主題別の委員会により方針が異なり、機関リポジトリや上記PMCUKなど登録先は分かれる。ヨーロッパでは、ECやERC(European Research Council)など助成団体が助成研究の成果の義務化を行っている。この場合、機関リポジトリが主な登録先となる。ヨーロッパでは、DRIVERと呼ばれるハーベスタがヨーロッパ全域をカバーして検索のパスを提供しているほか、googleなどの検索エンジンによっても発見が可能である。 2. 我が国の状況 我が国は、オープンアクセスに関する政策はほぼ皆無である。国立情報学研究所のCSI事業による各大学のリポジトリやCiNiiによって公開されている紀要・学術論文・学位論文・研究報告等、JSTAGE上の学会誌などが学術成果のオープンな利用を可能にしているが、発見のパスは様々である。しかし、機関リポジトリに限定して言えば、アクセスの多くは検索エンジン(google等)経由であり、これが最も主要な発見ルートとなっている。NIIのJAIRO経由もないではないが、自覚的に利用されているのは検索エンジンと言えよう。
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