研究概要 |
[目的]本研究では地域の通常学級で体育授業担当教員が障害児の在籍する体育授業をどのように展開し(インクルーシブ体育),どのようなことを指導上の課題として捉えているかを整理するとともに,指導場面における課題整理のマニュアルと適切な指導や配慮についての事例集を試作することを目的とした。 [結果等]都内23区から任意に抽出した小学校400校の教員を対象に実施したアンケート調査の結果(有効回答175、回収率43.8%)から、以下のことが明らかになった。回答者した小学校教員の約70%が通常学級の体育授業で障害児を指導した経験を有していた。その内45%が肢体不自由児の指導経験があり、その他の障害では知的障害児と発達障害児の指導経験であった。指導にあたっては、障害の状態に応じてルール、道具、距離の変更や特別な役割を考えるなどの配慮がなされていることが明らかとなった。これらの教員の9割以上が障害児の指導に難しさを感じ、特に障害状態の把握、障害に応じた配慮や工夫の仕方、評価の仕方を課題として挙げていた。これらの課題に対する解決方法として、特別支援学校の体育教員への教育相談や支援を期待する回答が多く(93%)、特別支援学校が蓄積した教科指導に関する知見が必要とされていることが示唆された。 課題整理マニュアルは、授業参加において児童生徒の実態のとらえ方と目標設定の仕方をA4用紙1枚で作成した。指導や配慮についての事例集は、陸上競技、水泳、球技(サッカー、ポートボール)、表現運動、マット運動、縄跳びなどの内容について作成した。これらのマニュアルと事例集は今年度実施した小学校体育授業の支援活動において活用した。おおむね、授業担当の教員から有効との評価を受けたが、ケースよって修正が必要な部分があり、今後の課題が明らかにされた。
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