研究概要 |
本研究では平安時代末期および鎌倉時代のたたら製鉄法の研究・復元を行い,平安・鎌倉時代の名刀の復元を目指してきた,本阿弥流日本刀鑑定士の川相勝氏(岡山県井原市在住)の協力および指導・助言の下で,「たたら製鉄法」の実験を行った。炉の中で生じる化学変化の考察や温度の計測,炉の中の様子の観察や原料である砂鉄の重量に対する得られた鋼の重量の計測,使用した松炭の計量などを行い,「川相式たたら製鉄法」の評価を行った。「川相式たたら製鉄法」では,数個のコンクリートブロックを置き,その上に20枚程度の耐火レンガを用いて3段の高さに炉を組み立てて,電動の送風機を使って操作する方式の「たたら製鉄装置」を組み立てて実験を行った。今回の実験の結果を以下に示す。 砂鉄の使用量:3000g(3kg) 得られた鋼の質量:950g(0.95kg) 収率=約53% [砂鉄中に含まれる鉄の質量(理論値)に対する得られた鋼の質量の割合] 炉の中の最高温度(酸化帯):1300℃~1400℃(推定) 炉の中の反応温度(還元帯):400℃(表面付近)~800℃(内部) 1回の操業あたりの炉の運転時間:約2時間程度 今回の実験では,得られた鋼の収率が理論値の50%を越えるという驚くべき結果が得られた。また,「たたら」の操業は極めて安定したもので,くり返し実験を行ってもほぼ同様の結果が得られた。このように,「川相式たたら製鉄法」の,小規模・短時間・低コストで少量・高品質の鋼を高い収率で生産することができるという優れた点が確認され,理科教育やエネルギー教育の観点からも優れた教材であることがわかった。
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