【研究目的】 亜熱帯地域に属する沖縄県には様々な機能性を秘めた生物資源が存在する。九州南端から沖縄地域に生育するゲットウ(Alpinia speciosa)は、ショウガ科ハナミョウガ属の多年草植物で全株に独特な香りを有し、精油成分や水蒸気蒸留の抽出過程で得られる蒸留水には経験的に消臭、抗菌、抗カビ作用が認められるとして注目されている。しかしながら、精油成分のなかで何が抗菌・抗カビ作用に大きく寄与するのか、組み合わせや含有比率によって相乗効果があるのかなど複数同時に存在する精油成分の特徴については不明な点が多い。 そこで本研究では、亜熱帯植物資源から得られる精油成分の化学的な分析と抗菌・抗カビ試験を行い、抗菌・抗カビ作用に効果のある成分の組み合わせや含有比率、相乗効果等についてその因果関係を明らかにする。 【研究方法】 水蒸気蒸留装置により、幾つかの同族別種のゲットウ茎葉について蒸留試験を実施して精油および蒸留水を精製し、これらの成分分析を行い解析した。得られた精油および蒸留水をもちいて、抗菌・抗カビ試験を行う。試験結果より、ある種の菌とカビに対するゲットウおよびウコンから得られる精油と蒸留水の抗菌・抗カビ作用を菌やカビの生育阻止円などから解析を行った。 【研究成果】 水蒸気蒸留装置によりゲットウの茎葉について蒸留試験を行い、得られた精油および蒸留水の成分分析を行った。GC/MSの分析結果から、モノテルペン炭化水素類が8成分、モノテルペンアルコール類が3成分、アルデヒド類が4成分、ケトン類が1成分、オキシド類が1成分の計17成分の有用物質を同定した。 精油中には主にテルペン類が多く含まれ、蒸留液中にはアルデヒド類が特化していた。また、葉や茎の部位別、前処理操作、品種によって有用物質の成分数や含有量に増減変化があることが確認された。抗菌・抗カビ試験の結果からは、リナロール、テルピネン-4-オール、α-テルピネオールといったモノテルペンアルコール類が主に作用していることが明らかになった。モノテルペンアルコール類に注目して、化学分析を行いその濃度から抗菌・抗カビ作用を推察できることが示唆された。
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