本研究は、漂流ブイと呼ばれる浮標を連続追跡することによって、所望深度における海水の挙動を把握し、海洋学的課題(海洋流動場と海洋基礎生産場の関連究明)に取り組むために、入手が容易で且つ安価・小型軽量である上、近年の多機能化により今や利用者の必需となったGPS機能を持つ携帯電話(GPSケータイ)を搭載した漂流ブイを新規設計するとともに、データ一元管理機能・海洋流動解析ツール・可視化ツール等を含む遠隔動態管理システム(GPSMAP for RIAM)を設計・開発した。 具体事例を以下に述べる。本システム開発に対する柔軟性と拡張性を精査した結果、本開発における利用携帯キャリアはKDDI(au)を選定し、同社の「GPSMAP type2」をカスタマイズすることで、GPSMAP for RIAMを設計・開発した。本システムは、GPS漂流ブイの動作および取得データを一元管理できるように、PHPとMySQLといったウェブおよびデータベース言語でプログラム化し、webブラウザからのユーザ要求に対して動的に制御・解析処理が実行できるように設計している。漂流ブイ本体および所望深度の流動追随と風圧流抑止の役割を兼備する抵抗体ドローグは、既往文献を参考に設計しただけでなく、小型・軽量化にも配慮したことで、既製品のブイに比べて性能面・作業面を格段に向上させた。当該ブイは、GPSケータイをブイ上端に配置したプラスティック製収納瓶内へ防水封入し、一定時間間隔によるGPS衛星との通信により、ブイの位置情報を受信し、サーバ側へ当該情報を送信する仕組みを持たせた。 上述した一連のシステム設計・開発により、搭載機能の変更や拡充、観測インフラの整備・改良が自前で所望の通り構築できるようになった。中でも、従来市販品とは異なり低価格で小型・軽量に構成可能なGPSケータイ型漂流ブイの測器拡充により、三次元的な海洋収束・発散場の現場観測がコストパフォーマンスの高い計測環境を整えて実施できるようになり、今後この分野の研究進展が大いに期待される。
|