研究概要 |
【目的】 本研究では,小児のインフルエンザ罹患者を対象として,麻黄湯顆粒内服後,あるいは麻黄湯坐剤投与後の指標成分であるエフェドリンの血中濃度測定法を確立し,その体内動態を明らかにし,麻黄湯の小児への安全な臨床使用法を確立することを目的とする. 【方法】 (1)血中エフェドリン測定法の確立:中野らの報告(薬学雑誌;120:583-586,2000)を参考にGC/MS法を用いて血漿中エフェドリンを内因性カテコールアミン等と分離定量可能な測定法を検討した.なお,エフェドリンは覚醒剤原料であるため,島根県より覚せい剤原料研究者指定(指導教官:指定番号第20-1号)を受けて研究を行った.(2)臨床効果・副作用との関連性の検討:麻黄湯投与の効果判定を行った.さらに,副作用発現,臨床検査値異常とエフェドリンの血中濃度との関連を評価した. 【結果・考察】 (1)血中エフェドリンの定量法:塩酸エフェドリンを既知量添加したヒト血清からヘキサン-酢酸エチル混液(9:1)を用いてエフェドリンを抽出し,N-ヘプタフルオロブチリルイミダゾール(HFBI)により誘導体化した.その誘導体化エフェドリンをGC/MSにて検出した.ISとして3-フェニル-1-プロピルアミンを用いた.エフェドリンのピークはm/z254をモニターしたところ,保持時問が約6.1分に認められ,ヒト血清による妨害となるピークは検出されなかった.エフェドリン濃度として0.001~10μg/mLの範囲で分離定量可能であった.(2)麻黄湯坐剤の臨床応用を行い,インフルエンザを含む小児有熱患者に対して投与した結果,有害作用の発現は見られず,明らかな解熱効果が認めちれたことを報告した.(西村信弘 他,薬学雑誌;127:in press,2009).インフルエンザ患者の麻黄湯投与後のエフェドリン体内動態は解析中であり,症例を増やして報告する予定である.
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