研究概要 |
【研究目的】 がん薬物療法を安全かつ確実に遂行するためには、抗がん剤を組み合わせて使用した際に出現する副作用情報を適切に把握することが重要である。本研究では、電子カルテ記録をもとにがん薬物療法におけるレジメン毎の副作用データベースを構築することで、患者のQOLの向上とがん薬物療法の安全かつ適正な実施に貢献することを目的とした。 【研究方法】 1. 当院呼吸器内科におけるがん化学療法レジメンの使用状況について調査した。 2. レジメンの使用状況調査より、使用頻度の高かったCDDP/ETP療法とCBDCA/ETP療法について、Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0 (CTCAE)に基づいた副作用Grade別の副作用頻度、発現時期について比較検討し、レジメン毎の副作用危険因子について解析した。 2005年1月から2008年12月に当院呼吸器内科で小細胞肺がんと診断され、初回にCDDP/ETP療法(14名)、あるいはCBDCA/ETP療法(28名)を実施した患者の1クール目を対象とした。電子カルテより患者情報及び臨床検査値について化学療法前から2クール目のday0までデータ収集を行った。 【研究成果】 CDDP/ETP療法ではCBDCA/ETP療法に比べ有意に重篤な好中球減少とカリウム値の上昇が認められた。また、CDDP/ETP療法において化学療法後の最下点の好中球数と投与前の推定クレアチニンクリアランスに有意な相関が認められたが(R^2=0.608,p<0.005)、CBDCA/ETP療法では相関は認められなかった。以上、併用療法レジメンにおける副作用の特徴や危険因子を明らかにすることができた。CDDP/ETP療法において投与前の推定クレアチニンクリアランスを考慮した投与量設定をすることは、重篤な好中球減少の回避に有用であることが示唆された。この成果は、医療薬学フォーラム2009第17回クリニカルファーマシーシンポジウムにおいて、"小細胞肺がん治療におけるシスプラチンとカルボプラチンの副作用比較及びその危険因子の抽出"というタイトルで公表予定である。
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