肥満・糖尿病の原因として糖・脂質代謝異常があげられる。現在、各臓器の代謝変化をin vivoで解析するには、放射性化合物(RI)を用いた方法で行い、特別な実験施設を必要とする。そこで、非放射性(non-RI)試薬による糖・脂質代謝測定法の開発を行っている。 本研究では、脂肪酸酸化調節因子として働くマロニルCoA量の測定法の開発を行った。non-RIマロニルCoAの測定は、酵素分解による反応生成物を測定した。まず、脂肪酸合成酵素(FAS)によりアセチルCoAと反応させ、生成したNADPをD-Glucose-6-phosphate (G6P)とGlucose dehydorogenase (G6PDH)で反応させ、6-Phospho-D-Gluconate (6-PG)に変える。さらに6-PGをPhosphoglconate dehydorogenase (6-PGDH)で反応し、NADPHに変換、これを酵素サイクリングにより増幅後、比色定量した。酵素濃度、反応時間等の至適反応条件を検討し、96ウェルプレートでマロニルCoA標準液による標準直線(0~80pmol)を作成した。次に生体試料の調整方法を検討した。生体試料(脳神経核、筋肉、肝臓)は、測定緩衝液でホモジナイズ後、熱処理、遠心した。上清中のマロニルCoA量を測定し、non-RIでの組織中マロニルCoAの測定を可能にした。しかし、筋肉や肝臓においては、試料中に含まれる多量の内因性物質(G6P、6-PG等)の充分な除去が難しく、マロニルCoAのみを選択的に測定することが難しい。引き続き、内因性物質を確実に除去するため、方法め改良を行っている。 今後は、絶食や過栄養食を与えたときめ脳視床下部神経核、末梢組織の微量なマロニルCoAの変化量を測定し、動物を用いた治療薬の開発、スクリーニングに活用していきたい。
|