血栓性疾患や心血管疾患の発症機序の一つである血小板機能亢進の防止は、疾病の発症・進行防止に有効であり、近年、さまざまな抗血小板薬が開発され、治療に汎用されている。しかし、これら薬剤によって出血傾向などの副作用が発生し、重篤化すれば、致命的になることがある。よって、より副作用の少ない抗血小板薬の開発が必要である。本研究では、白血球などさまざまな細胞の機能に対する抑制作用の報告がある緑茶カテキン、特に生理活性の最も強いepigallocatechin gallate(EGCG)に注目し、血小板機能に及ぼす影響について検討した。その結果、EGCGは濃度依存的に血小板の凝集反応を抑制した。この作用は、EGCG添加後5分より認められ、2時間後も持続していた。この作用機序を解明するため、血小板表面に発現し、血小板の凝集および接着に深く関与するインテグリンに注目し、これらの発現及び機能に及ぼす影響を検討した。その結果、EGCGの濃度依存的にGPIIbIIIaの発現低下が認められた。GPIIbIIIa発現低下の作用時間は、血小板凝集抑制反応時と同様、作用後5分より認められたが、血小板洗浄によってEGCGを除去することによりGPIIbIIIa発現は回復した。しかし、その他のインテグリン(GPIaIIa、GPIb、GPIV)の発現変化は認められなかった。 本研究では、EGCGは血小板表面上のGPIIbIIIaと結合し、その結果、血小板凝集惹起物質との結合を阻害し、血小板凝集を抑制すると考えられた。これまで、EGCGはリンパ球上のインテグリンと結合し、その機能を抑制・阻害することが報告されており、血小板に対しても同様の作用があると考えられた。また、血小板洗浄によってEGCG効果が消失することから、比較的弱い結合であると考えられた。EGCGを含む緑茶カテキンは特定保健用食品として認可を受けており、安全性、有効性は証明されている。よって、EGCGは血栓性疾患や心血管疾患の予防薬または治療薬として期待できる。
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