本研究では、マウスの精巣上体尾部を直接凍結保存し、体外受精に提供できる精子の新たな簡便な凍結保存法として有効か否かを検討した。 これまで当施設で得られた常法の精子凍結保存法を用いた体外受精成績は、C57BL/6JマウスではFERTI-UP精子凍結保存液使用で75.95%、R18S3精子凍結保存液使用で50.5%であった。今回、精巣上体尾部を細断し、組織を凍結保存液中でそのまま凍結し体外受精に用いた。その結果、C57BL/6JマウスのFERTI-UP使用では75.8%、R18S3使用では34.2%と、これまでの常法の精子凍結保存法と同様の成績を得ることができた。また、精巣上体尾部の細断凍結保存法による他の系統マウス体外受精成績は、FERTI-UP使用でBalb/Ca=45.5%、C3H/HeN=65%、DBA/2J=41.9%、R18S3精子凍結保存液使用でBalb/cA=23.4%、C3H/HeN=は0%、DBA/2J=8.3%で、3種の系統群においてもFERTI-UP精子凍結保存液使用の場合、精巣上体尾部の細断凍結保存法は常法の精子凍結保存法と同様の体外受精成績であった。一方、27Gの注射針を用い精子凍結保存液を精巣上体尾部に直接注入し組織を凍結した場合では、いずれの系統においても精巣上体尾部の細断凍結法より体外受精率は低かった。 まとめ:精巣上体尾部組織を細断して直接凍結保存しても、これまでのストローを用いた精子凍結保存法と体外受精において同様の成績を得られた。この結果は、精巣上体尾部の細断凍結法が常法の精子凍結保存法よりも非常に簡便で有用であるばかりでなく、常法の精子凍結保存を行った後、残った精巣上体尾部を更に有効利用できることを示している。従って、従来の精子凍結保存法に加え、精巣上体尾部の細断凍結保存法を併用することにより、例えば、希少な遺伝子組み換え動物の精子を無駄なく、より有効に保存・利用できることが示唆された。
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