研究概要 |
遺伝病患者の原因遺伝子を同定することは、遺伝子診療を行う上で必要不可欠である。ポストゲノム時代となり塩基配列決定が高速になっても、一般病院の遺伝子診療の現場では、原因遺伝子全てを塩基配列決定することは、経費も労力も莫大である。いつの時代にも、経費も労力も少なくてすみ、なおかつ精度も保証される方法は重宝される。 そこで、環状テトラアミンの亜鉛錯体(亜鉛サイクレン)が中性水溶液中でDNAのチミンに結合して二重らせん構造を局所的に融解させるという性質を利用し、500bp~1kbくらいの長い断片でも変異部位をスクリーニングできるスクリーニング法の開発に取り組んだ。まず、既知の遺伝子変異としてBCHE遺伝子(増幅産物として339bp,266bp)を使用し亜鉛サイクレンを0μM,10μM,20μM,30μM,40μMの濃度に加えSYBR Green IによるリアルタイムPCRを行い増幅産物の配列に固有の値を示す遊離曲線分析を応用し、ヘテロデュプレックスアッセイを試みた。顕著な違いが見当たらなかった。次に、変異同定済みのBCHE遺伝子K-ras遺伝子(増幅産物として107bp)のPCR産物を、亜鉛サイクレンを混合したポリアクリルアミドゲルで泳動し、ヘテロデュプレックスアッセイを試みた。その結果、BCHE変異は電気易動度の違いとして検出できなかったが、K-ras遺伝子は変異の種類によって泳動パターンが異なっており、短いPCR産物では変異の存在をスクリーニングできることが確認された。さらに、目的としている500bp~1kbくらいの長い断片でも変異部位をスクリーニングできる条件設定を進めている。
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