研究の目的:告示された新学習指導要領では、「言語力」の育成をはかる必要性が指摘されている。保健体育の授業においても、文章力や思考力の育成については、常に念頭に置いておく必要があると考える。それは実技を実践し技術を獲得して過程で、体験したことを言葉として残し、その内容を常に見直していく中で培われるものと考える。そこで、保健体育の学習で用いられる学習カードの内容を詳細に検討し、生徒が活動の中でどのような言葉を残し、その言語内容が単元の進行に従いどのように変容するかを調査する必要があると考えた。 研究計画:本研究では球技領域の中の第3学年男子ハンドボール単元をとりあげ、使用した授業カード分析を通し出現する言語の変容を調べることとした。授業カードに毎時間、授業の感想や技術的な問題点を記述させ、教師が点検し、フィードバック情報を付して次時の活動の支援とする。蓄積したカード情報を、単元終了後、全生徒分をPCに入力(男子学年100名×単元時数15時間=のべ1500時間)し、その言語情報の変容を検討する。 研究成果:先行実施した第2学年女子のハンドボール単元の授業カードから41のキーワードを読みとり「攻撃」「防御」「空間認知」「チーム」「技術」「感情・考察」の六つに再分類した。単元を導入期-展開期-まとめ期に分け、第3学年男子ハンドボール単元で扱った授業カードを対象に分析した。その結果、単元が導入期、展開期、まとめ期と進むに従い、カードに記述されるキーワードの数が増加していく結果を得た。また、六つに分類したキーワードの各期の出現割合から、「攻撃」「空間認知」「チーム」は全体に占める割合が大小の差はあるがほぼ一定、「防御」は増加、「技術」は減少、「感情・考察」は展開期以降増加という結果を得た。以上のことから、六つに分類されたキーワード数が単元が進むにつれて変化し、授業内容に沿って言語能力が変容していくことが推察された。
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