研究概要 |
職場でのうつ病スクリーニングの一般性を検討するため,2008年度某企業の健康診断において約600名の男性従業員に対して, DSM-IVの半構造化面接と気分質問調査票(Profile of Mood States:POMSの両方によるうつ病診断を行ったデータクリーニングを行い,不十分なデータを削除したのち592入の男性データを対象データとした。解析では, DSM-IV大うつ・小うつ病診断を基準とし, POMSうつ得点の感度・特異度を調べて受信者操作特性下面積(Area Under the Curve: AUC)を算出(オリジナル)。 同様にPOMSうつ質問1項目のAUC(15通り)と大うつ・小うつ病のAUC比較も行った。 大うつ病の有病率は,25人(4.2%),小うつ病は27入(4.6%)であった。POMSオリジナル版の大うつ病に対するAUCは0.71,小うつ病に対するAUCは0.63であった。POMSの1項目でみると,大うつ病に対しては"ゆううつだ"のAUCが0.73と最も高く, "あれこれ心配だ"(0.72), "気持ちが沈んで暗い"(0.72)が続いた。小うつ病に対しては"くたびれた"のAUCが0.70と最も高く, "疲れた"(0.69),"ゆううつだ" (0.67)が続いた。 面接によるうつ病の診断が質問調査票でもある程度出来るという本研究の結果は,2006年度に我々の発表した論文(Takeuchi T, Nakao M, Yano E. Primary Care & Community Psychiatry 11:13-9, 2006)を他施設で検証し,その一般性の可能性を広げる結果となった。来年度以降の複数施設における自殺予防を目的としたコホート比較検討試験実施の基盤となる意味で重要である。
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