研究課題
特別研究員奨励費
ゲノムワイドのCRISPR-Cas9スクリーニング法を用いて、ヒト細胞におけるコドンバイアスによるmRNAや翻訳制御に関わる遺伝子を網羅的に同定する。これらの遺伝子群に対し、ネットワーク解析を行い、システムレベルでの標的同定を試みるほか、RNA結合モチーフを持つようなタンパク質に着目し、これらを強制発現、もしくはノックアウトすることにより、コドン変化によるmRNA安定性が変化するかを解析する。また、これらの解析により絞り込んだ候補遺伝子に関し、蛋白質翻訳との関連、細胞内局在、結合RNA解析などの観点から更に検討を加える。また、免疫細胞における発現やその応答をモデルに候補遺伝子の機能を解析する。
Hia氏は、哺乳類細胞においてmRNAのコドンの偏りがmRNAの安定性やタンパク質発現に与える影響を検討し、コドンの3番目の塩基がGもしくはCの場合mRNAの安定化、AもしくはUが不安定化に関わることを解明した。本共同研究では、コドンの偏りによるmRNA制御分子メカニズムを解明するために、ヒト細胞であるCas9発現K562細胞を用いてCRIPR/Cas9スクリーニングによりコドン依存性に発現を変化させる遺伝子のtranscriptome-wideスクリーニングを行った。その結果、制御因子として分子Xを含む一群の遺伝子を同定することに成功した。続いて、この分子Xを欠損するK562細胞を作製したところ、最適、非最適コドンを有するレポーターの発現をそれぞれ低下、上昇させた。また、この欠損細胞を用いてTranscriptome解析などの検討を行うと、この細胞ではコドン依存性に遺伝子発現が影響を受けていることが明らかとなった。さらに、この細胞を用いてRibosome profiling解析を行い、コドン依存性に翻訳の変化が起こる事を見出した。今後、その分子メカニズムに関しさらに解析を行っていく予定である。また、Hia氏はBioinformaticsの専門家でもあり、コドンの研究にとどまらず、Cyclin JやRegnase-1など免疫調節因子の遺伝子発現変化における役割の解析に関しても研究を行った。その結果として、Cyclin Jがマクロファージにおいて代謝系に関わる遺伝子発現を負に制御していることを明らかにし、自然免疫の遺伝子発現制御の一端を明らかにすることに貢献した。さらに、Hia氏は、コドンの偏りによるmRNA安定性やタンパク質制御に関する総説や著書の執筆も精力的に行った。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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