研究実績の概要 |
Aspergillus fumigatus 関連種はアスペルギルス症の原因菌で, 治療の第一選択薬であるボリコナゾール (VRCZ) やイトラコナゾール (ITCZ) に対して耐性を持つことが医療上問題視されているが, その耐性機序については明らかになっていない.そこで, 本研究では交配後の最小生育阻止濃度 (MIC) の変遷を検討し, 交配による耐性獲得の可能性を解明することを目的とする. 千葉大真菌センター保存のA. udagawae, A. pseudoviridinutans, A. felis, A. wyominensis の臨床及び環境株を使用した. まず交配型 (MAT1-1-1, MAT1-2-1) の判別を行い, 相対する交配型で分子系統的に種内、種間の菌株を選択して交配試験を行った. 交配後, 子孫株の分生子を調整し, MICを測定した. また遺伝子組み換えの有無の確認はβ-tubulin 配列と交配型で行った. 供試菌株の交配型はほぼ1:1 に分布していることが確認されたが,A. pseudoviridinutansの臨床株ではMAT1-1-1のみが見られた. 交配試験では同種内で交配が見られたのは, A. felis のみだったため,本種の子孫株でのMIC を測定した. VRCZ 耐性株間の交配では,約95% の子孫株で耐性が確認され, 耐性機序の保存が示唆された. VRCZ 耐性株と感受性株の子孫株では中間値のMIC を示す株が約55% 見られた. これらの子孫株では遺伝子の組み換えが確認できた. ITCZ のMIC が2 管離れている株間の交配では,75% の子孫株で耐性の親株と同等のMICか, それ以上のMIC が計測され,交配後耐性株の割合が増加している例も確認された. 以上の結果より,耐性に関わる遺伝子が一つではない可能性が示唆された.
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