研究課題/領域番号 |
20H00037
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
小林 公治 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 特任研究員 (70195775)
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研究分担者 |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 特招研究員 (10272527)
末兼 俊彦 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部工芸室, 主任研究員 (20594047)
能城 修一 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員(客員研究員) (30343792)
猪熊 兼樹 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (30416557)
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40409462)
倉島 玲央 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 研究員 (40807492)
鳥越 俊行 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 室長 (80416560)
神谷 嘉美 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (90445841)
安藤 真理子 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, アソシエイトフェロー (30832456)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
41,080千円 (直接経費: 31,600千円、間接経費: 9,480千円)
2024年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2020年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 物質文化史 / 螺鈿史 / 対外文化交流史 / 工芸史 / アジア / アジア(東洋) / 螺鈿 / キリスト教器物 / 高台寺蒔絵 / 水口レイピア / 文化交流 / 文化交流史 / 貝・漆 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、唐の螺鈿をアジア螺鈿史の始発点として位置付け、それが東・東南・南アジアなどにいつどのように伝わり、それぞれの地域でどのような発展を遂げたのかを具体的に検証する。また始発点たる唐の螺鈿がどのように形成されたのか、その系譜を探るため西・中央アジアや殷周代の螺鈿との関係性についても検討を行う。 本研究は代表者に加え、研究分担者・協力者らが行う様々な個別的学際研究を総合化することで、実証的にアジア螺鈿史全体像の構築と各地各時代それぞれの文化交流実態を明らかにしていくものである。
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研究実績の概要 |
2022年度になってようやく新型コロナ感染症による問題が小康化したことにより徐々にではあるが海外を含めた諸調査研究活動がある程度実施できるようになった。また本年度は2021年度予算からの再繰越分と2021年度の繰越分の執行を優先したため、2022年度予算については分担分を除いて全額2023年度への繰越となった。以下、研究実績の概要を記す。 2022(R4)年度 上記のように、2022年度に当該年度予算で実施した調査研究活動はない。とはいえ実際は精力的に調査研究を行っており、また年度末には先年から科研費での調査および研究を行って来た滋賀県甲賀市藤栄神社伝世の通称「水口レイピア」について中央公論美術出版より『伝世洋剣 水口レイピアの謎に挑む』という書名で一般も対象とした学術報告書を刊行した。 2023(R5)年度 海外調査および海外所在文化財の招来による調査や研究発表を中心に実施した。7月にはタイ国立図書館所蔵の経典表板螺鈿装飾などの調査、インド・ビーダルでのランギーンマハル螺鈿装飾調査とゴア市内調査、8月には16‐17世紀を中心とした中国沿岸地域(福建省・広東省)での漢人および外国人墓石装飾と漆器調査、10月には長崎市内日本二十六聖人記念館での所蔵品修復に関する協議と長崎歴史文化博物館での螺鈿漆器調査、11月に浦添市美術館での講演と同館および沖縄県立博物館での所蔵漆器類調査、12月にソウルで長崎日本二十六聖人記念館所蔵品に関する修理協議を行った。また2024年1月にはポルトガル個人蔵の南蛮漆器・類南蛮漆器書見台を日本に移送し、奈良国立博物館・奈良文化財研究所、また東京文化財研究所にてX線CT・墨書文字解読、蛍光X線分析やデジタルマイクロスコープによる画像調査を実施したほか、東京文化財研究所の所内研究会にて外部研究者を交えてその研究成果を速報的に発表報告するなどした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は新型コロナ問題後、ようやく多方面での調査を本格的に実施することができたが、特に先年より大きな歴史的問題を包含すると考えてきた在ポルトガルの個人蔵キリスト教書見台2基に対して、諸般の理解協力を得て日本にまで移送し、種々の調査を実施した。その結果、一点の書見台については琉球かマカオのどちらかという論争があったその装飾地が、マカオであることがその墨書文字判読により決定され、その結果、16世紀末から17世紀初めにかけてのポルトガル拠点マカオと日本との工芸品をめぐる密接な影響関係の存在が明らかにされた。またもう一点については、1630年代の日本製南蛮漆器書見台の中央部からX線CT調査によって厚い漆塗によって隠されていたイエズス会のシンボル、IHS紋が確認された。このことは、ヨーロッパへの輸出に際し当時の過酷な宗教弾圧でこれがキリスト教の器物である証拠を消し去って安全を確保し輸出するため、その形跡を完全に隠そうとして行われた痕跡であることが判明し、江戸幕府によるこの時期の過酷な禁教実態の一端を示すこれまで知られていない新資料であることが明らかにされた。 本年度は、これまで知られていない資料の存在を本調査研究によって確認できたことから上記評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の予算による研究で明らかとなった事実について、さらなる補足研究や発展研究を実施し、早急にその結果を公表したい。また、南蛮漆器の成立過程については、明らかに日本の蒔絵技法による装飾がなされながら、その器形は本年度の研究で確定したマカオなどの中国南部沿海地域で造られた書見台と同じ形態を持っている在ポルトガルの最初期書見台2基について検討を進め、ポルトガル人がそれら中国製書見台の木胎を日本に持ち込み、日本で蒔絵螺鈿装飾のみを行っていたという仮説について検証を進めたいと考えている。 またこのほか、タイの国立図書館所蔵ラッタナーコーシン朝期仏経典表板装飾に認められる多様な螺鈿様相について検討を進め、その実態や対外的影響関係の把握、国内外各地での中国明代から清代までの螺鈿漆器類の調査によるその編年確立に向けた検討、メキシコに伝わる螺鈿器類の調査実施と日本からの輸出実態の把握など、国内外各地での積極的な調査を行い、作品の詳しい実態と歴史的環境の理解に努めていきたいと考えている。
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