研究課題/領域番号 |
20H00041
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
坂井 正人 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (50292397)
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研究分担者 |
山本 睦 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (50648657)
松本 剛 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (80788141)
時津 裕子 高千穂大学, 人間科学部, 教授 (90530684)
松本 雄一 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 准教授 (90644550)
大杉 尚之 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (90790973)
本多 薫 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (90312719)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,720千円 (直接経費: 34,400千円、間接経費: 10,320千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2022年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2021年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2020年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
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キーワード | ナスカ / 地上絵 / 人工知能 / 画像認識 / 土器 / 世界遺産 / 認知心理学 / 物体検出 |
研究開始時の研究の概要 |
世界遺産ナスカの地上絵を研究対象として、画像認識に特化したAI(人工知能)を導入することによって、破壊の危機に瀕しているナスカの地上絵を保護するために不可欠な地上絵の分布図を作成する。また、AIを活用して、土器の時期同定を効率的かつ正確に行うための方法を確立した上で、地上絵付近に分布している大量の土器を分析して、地上絵が利用された時期を明らかにする。なおAIを効果的に導入するために、人間が地上絵や土器を認識するメカニズムについて検討する。
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研究実績の概要 |
「ナスカ地上絵の分布図作成」(1) ナスカ台地およびその周辺部において、AIによって同定した地上絵の有力な候補を、ドローンを用いた現地調査によって確定する作業を、5ヶ月間にわたって実施した。その結果、具象的な地上絵と幾何学的な地上絵を新たに多数発見することができた。具象的な地上絵は、制作技法によって線タイプと面タイプと区分されてきたが、人工知能のお陰で同定された地上絵の数が増大したため、2つのタイプの差異は制作技法だけでなく、絵柄の内容とも対応することが判明した。(2) クラスター分析(認知心理学)による分類精度の検討によって、直線の地上絵は水流の跡と区別することは容易であるが、自動車の轍と区別することは困難であるという結果が得られた。これは前年度の印象評定を支持するものである。 「地上絵の保護」AIを活用した本研究の成果にもとづいて、破壊の危機に瀕している地上絵を同定したので、それらを保護するための計画を立案した。地上絵を保護するために、ペルー文化省と山形大学の間で、地上絵を保護するための新協定を2023年12月に締結した。 「ナスカ土器研究」これまで層位発掘した公共センター(紀元前1世紀~紀元後16世紀)から出土した土器とカーボンを再整理・検討した。その一方、ナスカ地域の編年の明確な指標となる「標識土器」をめぐって、異なった「実践コミュニティー」に属する熟練考古学者を対象として、認知心理学的実験を実施した。これらの成果にもとづいて、土器を人工知能の学習データとして利用するための手法を検討した結果、土器片の画像データは、装飾・表面整形・色に関する学習データとして利用できるが、器形の学習データとしてはそのまま利用することは難しいので、器形に関する認知心理学的実験の成果を活用する必要があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・「ナスカ地上絵の分布図作成」 人工知能を利用することで、多数の新地上絵を発見できただけでなく、具象的な地上絵の2つのタイプ(線タイプと面タイプ)の差異が、制作技法だけでなく、絵柄の内容とも対応することが明らかになったので。また認知心理学的実験によって、直線の地上絵は水の流れた跡と区別できるが、自動車の轍と区別することが難しいことが、印象評定だけでなく、クラスター分析でも明らかになったから。 ・「地上絵の保護」AIを活用した本研究の成果にもとづいて、破壊の危機に瀕している地上絵の保護計画を立案しただけでなく、それを実施するための協定をペルー文化省との間で締結できたから。 ・「ナスカ土器研究」 土器片の画像データを人工知能の学習データとして利用するだけでなく、それを器形に関する認知心理学的実験の成果と組み合わせることで、土器の時期を同定する作業を効率的かつ正確に実施することができるという見通しが得られたから。
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今後の研究の推進方策 |
「ナスカ地上絵の分布図作成」(1)人工知能によって同定できた具象的な地上絵候補の数があまりにも多いため、今年度中に全部を現地調査することは不可能である。そこで道沿いに分布している地上絵を優先的に調査する。(2)目視では「直線の地上絵」と区別が困難な「自動車の轍」の画像データを、異常検知用の人工知能の学習データとして使用し、「直線の地上絵」の分布図を作成する。 「地上絵の保護」破壊の危機に瀕している地上絵を保護するために我々が策定した計画を国際学会で発表するとともに、ペルー文化省と協議して、実行可能な保護計画を策定する。 「ナスカ土器研究」編年の明確な指標となる土器の装飾・表面整形・色に関する画像データを人工知能の学習データとして利用するとともに、器形に関する認知心理学的実験の成果を活用することで、この地域の土器の年代を同定するためのデータベースを確立する。その上で、すでに画像データ化している「地上絵付近に分布している大量の土器」の時期を決定する。それによって、地上絵の編年を明らかにする。
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