研究課題/領域番号 |
20H00047
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森田 敦郎 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (20436596)
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研究分担者 |
篠原 雅武 京都大学, 総合生存学館, 特定准教授 (10636335)
箭内 匡 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20319924)
大村 敬一 放送大学, 教養学部, 教授 (40261250)
津田 和俊 京都工芸繊維大学, 未来デザイン・工学機構, 准教授 (40545076)
結城 正美 青山学院大学, 文学部, 教授 (50303699)
中野 佳裕 立教大学, 21世紀社会デザイン研究科, 特任准教授 (60545218)
鈴木 和歌奈 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 講師 (70768936)
モハーチ ゲルゲイ 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (90587627)
田辺 明生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30262215)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2024年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2023年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2022年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2021年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2020年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | 気候変動 / 人新世 / スケール / 日常生活 / インフラストラクチャー / 社会運動 / 人類学 / 持続可能性 / 科学技術 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、地球環境は大きく変化しつつある。「人新世」とはこの惑星規模の変化を表す科学用語で、 二酸化炭素(CO2)の排出などの人間活動によって地球環境が文明の存続を脅かす状態に移行しつつあることを意味している。この変化を抑えるためには、消費の削減などの日常生活の変容や経済成長の再考などが不可欠である。本研究の目的は、惑星スケールの環境変化と、日常スケールの社会的文化的変化が、科学技術を介していかに結びついているのかを明らかにすることである。具体的には、消費や日常生活を変えようとする社会運動の国際的なネットワークと科学技術の関係に焦点を当てる。
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研究実績の概要 |
本年度は、理論的研究の整理を踏まえてフィールド調査の実施とその成果の中間取りまとめを行なった。特に、持続可能性のための環境社会運動と気候変動の関係に注目した調査結果の取りまとめを行い、以下の知見を得た。 まず、持続可能な社会を求める運動の多くは、特に日本の場合生活の変容を通して環境とのつながりを回復し、環境負荷を削減しようといういわゆるライフスタイル・アクティヴィズムを中心に展開している。そのほかのイニシアチブ、例えば地域社会におけるエネルギーインフラの建設など、は存在しているものの地域的な偏在が見られる。また、こうした草の根の運動と緩やかに連携する形で、トランジション・デザイン(持続可能な社会に移行するためのデザイン)を開発・実践するデザイナーやデザイン企業が活発に活動している。一方で、これらの活動と気候科学や気候変動に直接フォーカスした社会運動(気候アクティヴィズム)の関係は相対的に欠如している。この点は、上記の運動の間に一定の連携があるヨーロッパとは大きく異なっている。このことは同時に、ライフスタイル・アクティヴィズムと気候科学や環境科学との間の関係が希薄なことも意味している。こうした中、一部のNPOは両者をつなごうとする試みを行なっているものの現在の調査の範囲では大きなインパクトをもたらしているようには見えない。 こうした問題に直面し、本年度は本研究の知見をフィードバックすることによって両者の関係を構築するより積極的な介入的なアプローチを行う是非について検討した。社会科学研究においては対象を理解することが最重視される一方で、近年では良い方向に変えていくために対象に関わるアプローチも広く受け入れられている。近年の人類学、科学技術論などの関連分野の動向を検討し、介入を行いながら研究を継続する方法の検討と準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パンデミックによって最初の二年間、研究の進捗に大きな障害が生じた。また、研究分担者の田辺が退職により本研究から離れることになった。そのため、当初の二年間は海外での調査を中心に新たな研究計画の立案を迫られた。だが、デジタル調査の手法を採用したことでこうした変更を補いながら研究を進めてくることができた。また、本年度には関連する研究を行う海外の研究者との連携を再開することができたため、海外に関する研究の再構築の目処が立っている。 一方、日本を中心に行なってきた調査については今年度中間的な取りまとめを行うことができ、年度はじめに想定した通りの進捗があった。また、理論的研究と調査の接合についての作業も順調に進んでいる。一方、調査の結果明らかになった問題に対処すべく研究方法の再検討を行い、研究期間後半に向けての戦略の練り直しを行なった。こうした状況から、現状で計画は概ね順調に進展していると考えられる。 また、パンデミック中に実験的に行なった新たな研究方法の開発の中でも、特に人類学とデザインを融合する手法については一定の進捗が見られており、来年度はその成果をもとに本研究をさらに進められる可能性が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、本年度検討したより介入的な研究方法を用いて、気候変動の科学と社会運動の間のギャップを探究していく予定である。まず、そのための方法論のさらなる整理を行い、昨年度立案した研究プランをさらに洗練する。ついでこのプランに沿って介入的調査を実施する。調査の方法は研究成果の発信と介入を融合したものとなる予定である。ここでは、これまでの研究の知見を研究対象であるライフスタイル・アクティヴィズムの当事者と共にpodcast などのインターネットメディアによって発信し、それに対して気候アクティヴィストや気候科学者などの関係者がコメント、対話する形式を検討している。こうした対話を設計することで、異なる環境運動の間の関心とアプローチの差異、気候変動の科学との関係を明らかにすることができると考えられる。このような方法は研究成果の発信と調査研究プロセスをより緊密に結びつけていこうとする最近の研究動向に基づいている。社会科学のより実践的な貢献が求められる中で、このような手法を実験的に用いることは本プロジェクトの社会貢献の面からも重要な意義を持つ。 加えて、次年度以降は、海外の研究者との連携の再構築を通して、これまで国内中心で進んできた本研究の国際的な位置付けを明確にしていく。すでに東南アジア、ヨーロッパ、南アメリカの研究者との交流を徐々に再開しており、共通理解のための土台作りを進めていく。
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