研究課題/領域番号 |
20H00049
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
田中 樹 摂南大学, 農学部, 教授 (10231408)
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研究分担者 |
荒木 良一 和歌山大学, 教育学部, 教授 (00530841)
藤本 麻里子 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 助教 (10555105)
寺田 匡宏 総合地球環境学研究所, 研究部, 客員教授 (30399266)
宮嵜 英寿 一般財団法人地球・人間環境フォーラム(研究推進ユニット), 研究推進ユニット, 研究官 (30455232)
山田 協太 筑波大学, 芸術系, 准教授 (40434980)
飯塚 明子 宇都宮大学, 留学生・国際交流センター, 准教授 (60806925)
三村 豊 総合地球環境学研究所, 経営推進部, 研究員 (90726043)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
44,590千円 (直接経費: 34,300千円、間接経費: 10,290千円)
2024年度: 11,570千円 (直接経費: 8,900千円、間接経費: 2,670千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2020年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 持続的保全型生業システム / 貧困と環境荒廃の連鎖 / 脆弱環境 / 生業複合 / 環インド洋地域圏 |
研究開始時の研究の概要 |
脆弱環境のもとで貧困と生態系の荒廃が進む環インド洋地域圏(ザンジバル、スリランカ、インドネシア、べトナム)を対象地域に、小規模な在来生業にスパイス作物を軸とする屋敷林・樹園地システムと小家畜飼養システムを複合する住民参加型の実証試験を行う。この生業複合は、①植物被覆や植生多様化による生態系保全効果の向上、②付加価値の高い地域産品の多様化、③生計向上と小規模経済の駆動、④社会的弱者層の参加余地(労力・資金・資材の低投入)に優れる。気候変動や社会・経済的変容に対して強靭で「ヒトも自然も(貧困削減と生態系保全の両立)」を実現する持続的保全型生業システムを形成しそれらの社会実践への展開を図る。
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研究実績の概要 |
(1)「生業複合」をめぐるフィールド調査:ザンジバル(ペンバ島)で零細農民に焦点を当て、スパイス栽培と小家畜(ヤギ、ホロホロ鳥)の飼養、未利用資源(バナナの偽茎や米ぬか)の実態を調査した。スパイス栽培では、主要作目クローブの樹園地の劣化(樹齢の高まりや樹間の除草の不徹底、収穫時の労力不足による生産量の低下など)が認められた。小家畜飼養は、こどもが担っていた従来の放牧管理が行き届かなくなり、数少ない収入源にも関わらず低調であった。未利用資源では、東南アジアのようにバナナの偽茎を飼料化する慣行がないことが分かった。ベトナム中部では、参加住民が取り組む小家畜飼養で、在来ミニブタに野生イノシシを掛け合わせイノブタを育成する新規の取り組みを確認した。 (2)現地実証試験:進捗の見られた対象地域(ザンジバル、ベトナム中部)で、在地生業に「屋敷林・樹園地システム」や「小家畜飼養システム」を織り込む住民参加型の現地実証試験を行った。ベトナム中部では、参加住民の発案による野生鶏交配種やイノブタの飼養と販売が動き始めている。また、未利用資源であるアカシア造林地の雑草を目当てに、ヤギを林間放牧する試みも始まった。ザンジバルでは、飼料作物(ソルガム)の栽培とヤギの囲い込み飼養を複合する新規の生業形成の試験が始まった。 (3)植物資源のDNA解析の分析系の確立:ザンジバルのクローブの葉から採取した浸出液を用いてDNAを検出・分析する方法を開発した。 (4)日本国内への研究知見や経験の還流:沖縄県久米島で赤土流出抑制のためのアロマ植物(レモングラスなど)の植生帯の形成と学習ツーリズムへの活用の実証試験を行い、その有効性を確認した。鹿児島県奄美大島では、ザンジバルのバニラ栽培の知識を活用しつつバニラ農園の開設支援を行った(バニラの露地栽培地としては世界的な北限となる見込み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、フィールド調査と現地実証試験を並行して進めるなか、研究成果の社会実装を意識し、その準備を進めてきた。ベトナム中部では、小家畜飼養(野生鶏交配種、在来ミニブタ、イノブタ、ヤギ)を軸とする零細農民向けの生業形成の実証を行い、地域人材が育ちつつある。ザンジバルでは、インドネシアでの「飼料用ソルガムの栽培とヤギの囲い込み飼養の複合」やベトナムでの「廃棄されるバナナ偽茎の家畜飼料化」の知見を織り込みながら、零細農民らの住民組織で、スパイス作物を軸とする在来の屋敷林・樹園地システムに牧畜生業を組み合わせる実証試験が進んでいる。これは、アジアからアフリカへの知見・技術の水平移転の事例ともなる。社会実践を意識する仕事に比重が移る分、学会発表や学術刊行物の発行など情報発信が手薄になったことは反省点である。学術研究の面では、ザンジバルのクローブのDNA解析手法を開発したことが特筆される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度となる2024年度は、研究成果を社会実践に移行させる取り組みに重点を移す。ザンジバルとベトナムでは、実証試験区の運営を住民組織や有志世帯に移譲し、普及の起点となるようにする。また、ザンジバルでは、国際協力機構(JICA)の草の根パートナ事業として、「スパイス生産と小家畜飼養の複合」を内容とし、社会的弱者層の参加余地を織り込んだ案件を提案し採択を目指す。スリランカでのケースは、社会実践への移行には至らないが、その準備を進める。 ザンジバルの試料を用いて開発したクローブのDNA解析手法を用いて、ペンバ島のクローブの遺伝資源の分布図を作成し、現地政府機関(農業省や研究所)に提供する。聞き取り調査によると、クローブ生産はザンジバルの基幹産業であるにもかかわらず、学術調査が行われたことがないため、このような基本情報の提供を期待しているようである。 一連の研究試験や成果を学術刊行物や書籍の形で公表する。
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