研究課題/領域番号 |
20H00055
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分5:法学およびその関連分野
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
亘理 格 中央大学, その他部局等, 客員研究員 (30125695)
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研究分担者 |
大貫 裕之 中央大学, 法務研究科, 教授 (10169021)
徳本 広孝 中央大学, 法学部, 教授 (20308076)
岸本 太樹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90326455)
野田 崇 関西学院大学, 法学部, 教授 (00351437)
北見 宏介 名城大学, 法学部, 教授 (10455595)
洞澤 秀雄 中央大学, 法学部, 教授 (60382462)
小澤 久仁男 日本大学, 法学部, 教授 (30584312)
津田 智成 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (00779598)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
35,620千円 (直接経費: 27,400千円、間接経費: 8,220千円)
2024年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2023年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2021年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2020年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | 当事者自治的公法秩序 / 行政契約 / 行政計画 / 公共性 / 熟議 / 参加論 / エリアマネジメント活動 / 都市計画 / エリアマネジメント / BID / 開発事業 / 公私協働 / 私人間協定 / 合意手法 / 協定 / 小公共 / 比較法研究 / 行政の行為形式論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「当事者自治的公法秩序」の形成・執行において行政契約と行政計画が果たし得る機能を解明するとともに、この2つの行政作用に対する適切な法的コントロールの具体像を提示しようとするものです。従来の行政法学は、国民の法的地位に対する行政介入の差違に応じた行為形式論に立脚してきたため、行政契約と行政計画が有する法秩序形成機能を適切かつ十分に把握することができません。この限界を打破するため、本研究は、公法的秩序形成という新たな視点を加えることにより、行政契約と行政計画が果たし得る本来的機能を明らかにしようとします。
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研究実績の概要 |
今年度は、①エリアマネジメント制度について、都市再生特別措置法及び地域再生法に基づく日本の同制度及び英・米・カナダの同制度の比較検討のための講演研究会の開催及び②大阪市のエリマネ制度の聞き取り調査を実施する一方、③都市計画の制度運用面で「個別権利利益優先」観に立脚した日本の運用実態を、強固な「一般公益優先」観に立脚したフランスの運用実態との対比で分析する講演研究会を開催し、また、④企業活動等の私的主体による活動について、公共性・公益に関わることを理由に私的自治を制約し、行政主体と同様の公法的制約に服させることに、果たして又如何にして、正当性を認め得るかを明らかにするための講演研究会を開催した。 以上のような多面的研究を通して、第1に、「当事者自治的公法秩序」の多様性が明らかとなり、私人(民間)を起点とする公私協働と国・公共団体(行政)を起点とする公私協働とに大別される得ること、第2に、英米等のBIDや大阪市エリマネ制度は前者に属すのに対し、独仏の都市計画制度は基本的に後者のタイプに属すため、独仏における当事者自治的諸制度には、公共性・民主性・平等性等の法原理に照らして正当化可能か否かが常に問い直される事態となり得ることが明らかになった。 このうち英米におけるBIDについては、上記の諸法原理に照らして如何にして正当化が可能か、また大規模開発事業ではない既存の商店街や住宅地の開発に際して活用可能かが、検討課題となることが明らかになった。 他方、BIDがハンブルク等一部の州で採用されたドイツでは、上記諸法原理の見地からの正当化可能性をめぐって如何なる議論が展開されてきたかが要検討課題となる一方、BIDのような制度を有しないフランス都市計画法の運用実態において、私的イニシァティヴに基づく活動がいかなる法制度によって担われているかにつき、解明の必要があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、当事者自治的公法秩序を「私人(民間)を起点とする」タイプと「国・公共団体(行政)を起点とする」タイプに分類し、各タイプの当事者自治的公法秩序に固有の法的仕組みと検討課題を明確化した上で、諸外国法との比較法的方法により各検討課題を解明する方向で、本科研の研究目的を達成するための視点と方法論は確立することができた。本年度は、当該視点と方法論に基づく文献調査と講演研究会の開催を通して、当事者自治的公法秩序の形成・執行の法原理の比較法的解明という本科研のテーマにつき、少なくとも理論的部分に関する限り解明したと評価し得る。 他方、以上のような視点と方法論に基づく比較法的検討は、日本での外国法研究の成果である文献の調査分析及び当該課題に関する外国法制度に詳しい日本の研究者による講演を主としたものに限られてきた。これは、主に、過去3年間における新型コロナウィルス感染状況のため比較法研究の対象国である仏独及び英米における現地調査を行うことができなかったことに起因するが、この点は、今後状況の改善が見込まれることから、2023年度における海外調査を通して十分に克服することができる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
私人(民間)を起点とした公私協働タイプの典型である英・米・カナダにおけるBIDに関しては、公共性・民主性・平等性の見地から如何にして正当なものと認め得るか、また既存の市街地等におけるBIDやエリアマネジメント等の手法に活用可能性が現にあり得るかを解明するため、日本及び英米諸国における当該制度の運用実態把握のための調査を実施する必要がある。 また、従来国・公共団体(行政)を起点とした公私協働タイプを基盤としてきたドイツにおいて、ハンブルク州などで採用されたBIDをめぐって、賛否双方からいかなる議論がなされてきたかを把握するために、国内研究者の講演及びドイツ国内調査を実施する必要がある。 更にBIDのような私人を起点とした公私協働を有しないと思われるフランス都市計画法において、私的イニシァティヴによる活動を促進するため又はこれを組み込むためにいかなる法制度が用いられているかを解明すべく、フランス国内調査を実施する必要がある。 国内外にわたって以上のような調査研究を実施することにより、当事者自治的公法秩序の理論面で既に獲得した視点と知見を、更に運用実態面の把握を通じて補完・強化することが可能となる。以上により、当事者自治的公法秩序の法理論と運用実態の解明という本研究の目的の達成に向かって、更に歩みを進めることが可能となる。
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