研究課題/領域番号 |
20H00082
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 一橋大学 (2022-2023) 日本大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
清水 千弘 一橋大学, 大学院ソーシャル・データサイエンス研究科, 教授 (50406667)
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研究分担者 |
宮川 大介 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (00734667)
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
才田 友美 関西学院大学, 商学部, 助教 (30882419)
植杉 威一郎 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40371182)
秋山 祐樹 東京都市大学, 建築都市デザイン学部, 准教授 (60600054)
馬塲 弘樹 一橋大学, 大学院ソーシャル・データサイエンス研究科, 特任准教授 (60869121)
井上 智夫 成蹊大学, 経済学部, 教授 (70307114)
鈴木 雅智 横浜市立大学, データサイエンス学部, 准教授 (70847095)
北村 周平 大阪大学, 感染症総合教育研究拠点, 特任准教授(常勤) (90812090)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,460千円 (直接経費: 34,200千円、間接経費: 10,260千円)
2023年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2020年度: 11,960千円 (直接経費: 9,200千円、間接経費: 2,760千円)
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キーワード | 不動産バブル / 少子・高齢化 / 国際資金フロー / 生産性 / 価格指数 / 持続可能性 / 空間統計 / 都市解析 / 国際資本移動 / 人口減少 / 高齢化 / 環境配慮型社会 / 空き家 / 不動産価格 / 土地利用規制 / 空間計量 / 人口減少・高齢化 / 空き家・所有者不明土地 / 国際パネルデータ分析 / ヘドニックアプローチ / 空間計量経済分析 / 都市集積 / 不動産ビックデータ / 国際資金循環 / 不動産価格指数 |
研究開始時の研究の概要 |
不動産市場は、資産市場において大きな比重を占めるとともに、家計の生活や企業の生産活動と密接に関係する。本研究では、不動産市場に関するミクロレベルのデータを大規模に用い、以下の研究を進める。第一に、ミクロレベルで不動産利用の効率性を検証するとともに、不動産市場が家計・企業に及ぼす影響を構造推定やネットワーク分析の手法を用いて明らかにする。第二に、不動産市場における価格形成要因について従来考慮されてこなかった視点も付加し多角的な理解を提供する。これにより、人口減少・高齢化、国際的な資金移動、金融政策や税制などのマクロ要因に至るまで、不動産市場と実体経済との相互関係の包括的な解明を試みる。
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研究実績の概要 |
2020年、2021年に整備した不動産マイクロデータ、メッシュ単位集計データ、国際的な不動産市場の資金フローが理解可能なマイクロデータ、21か国に跨る不動産価格とマクロ経済変量、人口に関する長期パネルデータを用いて、本研究課題として掲げた、「不動産市場とマクロ経済」との関係を、データからの解明を試みた。第一の研究として、日本の賃貸住宅市場に潜む価格の粘着性問題のマイクロ構造の解明をした。ビッグデータによる価格粘着性の計測とともに、賃貸住宅への入居時における審査行動といった構造に至るまでデータを収集し、そこで行われている市場の細分化行動の実態を明らかにした。第二の研究としては、2021年度において実施した不動産市場の国際的な資金移動が各国の市場の価格へのインパクトの計測問題を発展させ、不動産が存在する国の同じ国籍同士の売り手と買い手と、海外から参入してきた買い手との価格構造の違いの解明を行った。この研究は、不動産市場のグローバル化を対象とした研究チームによって実施された。第三の研究としては、不動産市場の持続可能性を検討するチームによって多くの研究実績が報告された。具体的には、気候変動に伴う不動産市場のリスクの上昇や、とりわけ海面上昇に伴う水害リスクの高まりによる市場行動の変化に注目した。第四の研究としては、空間統計学の分野で発展してきている手法を改善し、不動産価格の時空間波及構造を考慮することが出来るモデルの開発や、土地と建物が一体として取引される価格データから土地・建物そして空間の要素を識別するモデルの開発など、新しい不動産価格の解明に向けての関数形を開発する研究も進めることが出来た。このような研究成果をもとに、フランス・Dauphine大学、英国・ケンブリッジ大学の共同研究者らと公開ワークショップを対面で実施し、多くの参加者の下で研究成果についての議論を行うことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
査読論文として、国際学術誌に18本、国内学術誌に6本と、計24本が掲載された。すでに投稿済みの論文も5本以上ある。さらに、査読付き論文以外にも、政府系研究機関や国内の学会、公益団体が発刊する学術誌に掲載された論説が24本と社会的な発信もできた。また、3年間の研究成果の一部を書籍としても出版することが出来た。また、国際学会での報告は8件、国内学会でも10件の研究報告を行った。また、海外から研究者を延べ10名を招聘し、一橋大学が主催者となり、ブリティッシュコロンビア大学、ケンブリッジ大学やDorphine大学らと対面での国際ワークショップを3回開催した。 これらのことから、当初予想した成果をはるかに上回る研究業績を上げているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年から2022年までの3年間は、マクロ経済環境や人口減少・高齢化などの社会構造が変化する中で、不動産市場にどのような影響が発生するのかといった問題の解明に焦点を当てた。今後においては、不動産市場の構造的な変化がマクロ経済にどのような影響をもたらすのか、住宅市場で発見されたマイクロな知見が、その他の耐久消費財市場でも等しく発生しているのか、といった問題の解明に取り組む。 具体的には、①生産関数を推計していく中で、土地を考慮した際に、その測定がどのように変化するのか、②人口減少・高齢化が不動産価格だけでなく、消費水準にも影響をもたらすのか、③住宅市場で発見された財の激しい陳腐化問題が、TVやパソコンのような耐久消費財でも等しく発生しているのか、といった問題の解明に取り組む。①の問題については、Asian Productivity Organizationと連携し、日本を含むアジア諸国の生産性に関わるデータを整備し中国の土地市場の変化と生産性の上昇との関係を明らかにするモデルの開発に取り組んでいるところである。同モデルが構築できれば、日本の1980年代の不動産バブルとその後の経済停滞との関係が解明できるとともに、今後のアジア諸国の生産性改善に関わる問題を抽出できるものと考えている。②は、フィリップスカープのモデルを応用し、人口構成の変化が資産市場のみならず財・サービス市場にどのようなインパクトをもたらすのかに関して、理論・実証的な分析を進める。③は、TVまたはパソコンのPOSデータを用いた技術進歩が価格指数に与える影響を解明し、住宅市場で発生している急速な価格減価の原因を探ることを進めていく。 これらの研究を進めることで、マクロ経済から不動産市場への影響、不動産市場からマクロ経済への影響という両方向でのパスが解明されるだけでなく、不動産市場を通じて他の財市場の市場構造の理解が深まることが期待される。
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