研究課題/領域番号 |
20H00117
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 昌宏 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任教授 (50182647)
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研究分担者 |
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
木村 正人 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70263358)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
39,390千円 (直接経費: 30,300千円、間接経費: 9,090千円)
2024年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2023年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2020年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 逆問題 / 複雑流体 / 特異拡散 / 定性理論 / 非線形理論 / 数値手法 / 非整数階偏微分方程式 / カーレマン評価 / 一意性 / 安定性 / 非整数階拡散方程式 / 粘弾性 / 順問題理論 |
研究開始時の研究の概要 |
応用上重要である固体と液体が絡む複雑流体や不均質媒質中の拡散現象の順問題と逆問題の数学解析、ならびに応用を視野にいれた数値解析手法の開発を目指す。逆問題は、観測データの適切な解釈と汚染などの精密な予測のための支配方程式のモデリングに本質的に関わる。一方で順問題は支配方程式が数学的に意味を持つかに関する基本的な課題である。主な対象は複雑流体の方程式と非整数階偏微分方程式であり、それらの方程式の逆問題の理論の構築を第一の目標とする。逆問題の前提となる非整数階偏微分方程式の解の一意存在などの順問題の包括的な理論体系の構築が第二目標である。第三の目標は現場に密着した数値解析を目指すことである。
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研究実績の概要 |
1.一般論展開を専ら目指して研究が蓄積されてきたカーレマン評価の理論を、これまでの本研究によって偏微分方程式の逆問題への応用のために調整しなおしたが、それを活用して課題となっている複雑流体などの数理物理に現れる偏微分方程式の空間変数に依存する係数や外力項を限定された解のデータによって決定する逆問題の一意性、安定性を確立しつつある。カーレマン評価に基づく方法論も本研究の枠組みで確立しており、順調に研究が進行している。 2.上記の研究遂行の上で、特に偏微分方程式が波動など、有限伝播速度を持つ場合にカーレマン評価を証明するために、物理的にも数学的にも方程式の主要部の係数にある種の条件が必要不可欠である。そのような条件を、課題となっている逆問題の物理的な背景と合致するように定式化し証明した。 3.本研究計画の枠組みで確立した非整数階偏微分方程式論に基づき、非整数階偏微分方程式の初期値・境界値問題について、解の一意存在はいうまでもなく、比較原理などの基本性質の理論を確立した。それらを応用して、非整数階偏微分方程式の非線形理論の構築を本格的に開始し、時間大域解の非存在、解の漸近挙動などで論文をまとめた。 4.3の成果も活用して、係数決定、ソース項決定、階数などの物理パラメータ決定の逆問題の数学解析を実施し、成果をあげた。特に、非整数階偏微分方程式について、放物型方程式と比べて弱い平滑化の作用を反映して、解の観測データに階数や外力項などの情報がよりよく保存されていることを利用して、放物型方程式の対応する逆問題と比較して、はるかに強い一意性の結果を証明した。 5.関連する非線形非整数階偏微分方程式の定性理論や数値手法の研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下の2つの理由による。 1.カーレマン評価による逆問題の手法を確立し、本研究計画の主要テーマの複雑流体だけでなく数理物理に現れる偏微分方程式に広く適用できるようになったこと。 2.カーレマン評価による逆問題の手法の研究に付随して、それが成立するための偏微分方程式の主要部の条件をより実用的な背景の下に明らかにしたこと。これは方程式の特性を検知できないことがあるような領域を明らかにすることと密接に結びつき、応用課題としても重要な cloaking の数学にも役立つ。 3.非整数階偏微分方程式の作用素論からの基礎付けを完了させ、逆問題の数学解析を順調に進めていること。 4.非整数階拡散・波動方程式の様々な逆問題の数学解析について、国際的な共同研究も組織して、世界をリードする成果をあげつつあること。
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今後の研究の推進方策 |
以下の課題について研究を推進していく。(1)複雑流体の逆問題解析を進めていくこと。また、カーレマン評価による方法論は、流体を問わず放物型、双曲型、シュレディンガー方程式、板などの高階の方程式など極めて広い範囲の偏微分方程式に対して有効なので、そのような範囲で逆問題の一意性、安定性を示していく。(2)前記(1)で述べた課題と対照的に、逆問題の一意性が崩れる cloaking 現象を偏微分方程式の立場で研究を進めていく。(3)非整数階偏微分方程式については、非線形の場合の定性理論ならびに逆問題の考察を継続していく。 研究の推進の方策の考え方としては、本研究計画が対象とする非整数階偏微分方程式の諸課題は急速に研究が国際的に進展しているので、課題ごとに共同研究チームを適宜組織して、成果を速やかに公表していくことを目指す。複雑流体関連の逆問題では、我々の方法論の広範な適用可能性を国際的に示し、国際共同研究を一層発展させる。
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