研究課題/領域番号 |
20H00129
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 量一 京都大学, 工学研究科, 教授 (10263401)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,330千円 (直接経費: 34,100千円、間接経費: 10,230千円)
2023年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2022年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2021年度: 11,830千円 (直接経費: 9,100千円、間接経費: 2,730千円)
2020年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
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キーワード | ソフトマター / シミュレーション / 流体力学 / マイクロスイマー / コロイド分散系 / 直接数値計算 |
研究開始時の研究の概要 |
メソフルイド分散系とは、相分離流体や高分子流体などのメソスケールの構造を有する流体中に粒子が分散した状態を表す名称である。メソフルイド分散系の内部には非常に遅いダイナミクスが存在するため、ミクロな分子シミュレーションを用いることは現実的でない。また内部に非平衡状態が容易に出現するため、マクロな計算流体力学をそのまま適用することもできない。注目するメソスケールの時間変化を捉えられる直接数値シミュレーション手法の開発が必要である。本研究では手法の構築にとどまらず、第三者が利用可能なソフトウェアを開発・公開することで、ソフトマター分野における計算科学の社会実装を目指す。
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研究実績の概要 |
ソフトマターとは,柔らかく複雑な内部構造を持つ物質の総称である.本研究では,特にシミュレーションの難易度が高い「メソフルイド分散系」を対象に,これまで比較的単純な粒子分散系に対して構築してきたシミュレーション手法を大幅に改善することで,i) メソスケール(濃度分布,界面,流動など)のダイナミクスを物理的に矛盾しない基礎方程式に基づいて計算するための直接数値シミュレーション手法を構築し,ii) それを使用した強力で適用性の高い直接数値シミュレーションソフトウェアを開発することを目指している.これらの目標を達成するためには,注目するメソスケールの時間変化を捉えるための直接数値シミュレーション手法の開発が不可欠である.本研究では,手法の構築だけでなく,第三者が利用できるようなソフトウェアを開発・公開することで,ソフトマター分野における計算科学の社会実装を目指す. データ解析とグラフィック機能に優れたワークステーションを京都大学に追加し,大規模シミュレーションのデータ解析と可視化を高効率で実現する体制を強化した.当該分野で評価の高いPhysical Review Research誌などに論文5報を出版すると同時に,対面型を含む多数の国際会議・国内会議において研究成果の発表を行った.研究を強力に推進し,かつ次世代の研究者を養成するために,博士研究員1名の雇用を継続した.2022年6月には,メソフルイド分散系の直接数値計算を実施するためのソフトウェアの最新版として「KAPSEL-5.01」の一般公開を行った.第三者の利用を容易にするために,100ページを超える日本語と英語のユーザーマニュアルも同時に公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,高度なシミュレーション技術を用いて「メソフルイド分散系」という複雑な内部構造を持つ物質のダイナミクスを解明することを目的としている.従来の研究では,比較的単純な粒子分散系に対してシミュレーション手法が構築されてきたが,本研究ではメソフルイド分散系に注目し,より高度なシミュレーション手法を開発することで,i)物理的に矛盾のない基礎方程式に基づく直接数値シミュレーション手法の構築,ii)それを実現するための直接数値シミュレーションソフトウェアの開発を目指しており,以下の実施項目に取り組んでいる. 実施項目1:メソフルイド分散系の直接数値シミュレーション法の構築 実施項目2:直接数値シミュレーションソフトウェアの開発 実施項目3:ソフトマター以外への応用 実施項目1では,メソスケールの遅いダイナミクスとマイクロスケールの系の挙動の双方向結合が重要な事例であり,各スケールに限定された既存のシミュレーション法をそのまま適用できない問題に取り組む.実施項目2では,直接数値シミュレーションを実行するためのソフトウェアを開発し,第三者による使用を通じて計算科学の社会実装の実現を目指す.さらに,実施項目3により,メソフルイド分散系に対する直接数値シミュレーション手法を他分野の問題に応用し,この方法の広い有効性を実証する. 2022年度は,実施項目1について「大規模シミュレーションの実施」に,実施項目2について「開発したシミュレーションコードの公開」,実施項目3について「マイクロスイマーへの応用」を完了した.これらは当初の予定通りであるので,順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度にモデル構築,2021年度にモデルの検証とシミュレーションコードの開発を完了し,2022年度には実施項目1について「大規模シミュレーションの実施」,実施項目2について「開発したシミュレーションコードの公開」,実施項目3について「マイクロスイマーへの応用」を実現しており,実施項目1,2,3について予定通りの研究成果を得ることが出来ている.コロナ禍の影響で2021年度までは外国出張を伴う成果発表が全く出来ていなかったが,2022年度にようやく対面型の国際会議で成果発表を実施できた.最終年度の2023年度は,各実施項目について残りの問題に取り組むとともに,国内外において研究動向の調査と研究成果の発表を積極的に行う計画である.
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