研究課題/領域番号 |
20H00132
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70251486)
|
研究分担者 |
永合 祐輔 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (50623435)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
45,760千円 (直接経費: 35,200千円、間接経費: 10,560千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2021年度: 17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2020年度: 21,190千円 (直接経費: 16,300千円、間接経費: 4,890千円)
|
キーワード | 物性物理 / 量子流体固体 / 超流動 / 量子相転移 / ヘリウム / フォノン / 誘電率 / 窒化ホウ素 |
研究開始時の研究の概要 |
ヘリウム薄膜は「2次元強相関量子多体系」として、トポロジカル超流動、量子液晶、非平衡などの新現象を示しうる。申請者は2次元ヘリウムの性質が「励起にエネルギーギャップをもつ局在固体」と「超流動」間の「量子相転移」という見方―量子相転移描像―で統一的に理解できることを提案している。 本研究ではこの量子相転移描像に基づき、2次元ヘリウムに期待される新奇量子現象を開拓する。具体的には、(1)フォノン照射による非平衡超流動状態の実現、(2)純2次元トポロジカル超流動ヘリウム3の探索、(3)ヘリウム4薄膜における固体と超流動の共存の検証、という3つの新奇量子凝縮相・量子現象の解明に取り組む。
|
研究実績の概要 |
本研究は、2次元ヘリウムに期待される新奇量子現象を、申請者が確立した量子相転移の普遍的描像に基づいて観測し、物性物理学の発展に資するものである。2022年度には以下の進展があった。 (1) 本研究で発見した、多孔質ガラス基板上水素およびヘリウム薄膜の誘電異常効果を詳細に解析し、測定を高周波領域に拡張するための準備を行った。誘電異常は低温で薄膜を吸着した時の誘電率と誘電損失が元のガラス基板のそれらより低下する(実効的に負の誘電特性を示す)ことで特徴付けられる。この解釈として、ガラス基板表面のトンネル2準位系への吸着分子の影響と、ヘリウム・水素分極率の吸着による変化について考察を行っている。さらに誘電率測定を高周波領域に拡張して、誘電異常の全貌を解明するための準備を行った。また、現有の希釈冷凍機を無冷媒化して測定を超低温領域に拡張する準備も進めた。 (2) 上記の誘電異常探索を平坦基板上ヘリウム薄膜について行うため、グラファイトとは異なり絶縁体である窒化ホウ素を吸着基板に用いた誘電特性・超流動特性同時測定装置の開発を進めた。 (3) 高周波フォノン生成によるギャップ固体およびボースグラスからの非平衡超流動状態の実現については、金属薄膜からのフォノンパルス生成法と超伝導薄膜ボロメータの開発を行った。 (4) ヘリウム3薄膜における純2次元トポロジカル超流動状態の探索を目指して、無冷媒核断熱消磁装置の開発を継続している。さらにコンパクトで短期間に準備可能なPrNi5核断熱消磁冷凍装置開発を、ミュンヘン工科大学との共同研究により進めた。 (5) 超低温物理学国際会議(ULT2022)を主催し、本研究に関連する議論を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子薄膜へのフォノン照射と検出の手法を、前年度までに金属薄膜を用いる手法に変更して開発を進めている。開発に必要な極低温冷凍機のマシンタイムが十分でなかったため、2023年度以降も開発を進めている。また、極低温冷凍機として現有の希釈冷凍機の無冷媒化作業を進めているが、これも当初の予想より時間がかかっている。従ってフォノンによる非平衡超流動探索に、遅れが生じている。 一方、高周波領域での誘電率測定、低周波超音波による非平衡超流動探索、窒化ホウ素上ヘリウム薄膜の実験はいずれもすぐに開始できる状況まで準備が進んだ。また擬2次元ヘリウム3の超流動実験に必要な核断熱消磁冷凍装置開発にも進展があった。 以上の研究進捗状況を総合的に判断して、やや遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画であげているほとんどの実験の準備が進んでいるので、今後は冷凍機の準備を完了して実験を開始する。また誘電異常効果については成果のとりまとめを行う。
|